東日本大震災およびこれに付随して起きた福島第一原子力発電所事故に関連して、予備自衛官を含む10万人超の自衛隊が派遣され、国民の負託に応えるべく「身を賭して」頑張っている。
「事に臨んでは危険を顧みず」の宣誓を行う唯一の組織で、日本人の一人として自衛隊における教育訓練で培われた純粋で気高い志操の結果である。
政党やイデオロギーに関わりなく全国民が自衛隊の存在に否応なく目を向け、活躍に瞠目しているに違いない。しかし、自衛隊は軍隊でないために公私にわたって国民が及びもつかない不当な扱いを受けてきた。
今次の災害派遣に当たっても法の未整備などによって、人命救助その他の能力を存分に発揮できたとは言い難い面も多々あるように見受けられる。
以下、歴代首相をはじめとした政治家の安全保障、なかんずく自衛隊に対する低い意識がもたらした現実に目を向け、自衛隊を「苦しいときの神頼み」で終わらせることなく、しかるべき地位と名誉を与えるよう提言する。
歴代首相の自衛隊認識
首相が直面する最大の試練は、今次のような未曾有の大災害や平戦時を問わず安全保障・防衛に関わる対処より他はない。しかし、歴代首相は真摯に対応してきたとは言い難い。その特徴的な表れが自衛隊に対する姿勢である。いくつかを具体的に例示しよう。
阪神・淡路大震災は、自衛隊を違憲合法と主張していた社会党党首の村山富市氏が首相の時に発生した。
人物的には好々爺であったかもしれないが、言うこと為すことは国民の安全と安心を担っているという意識に欠け、折角の米軍の支援申し出を断ったりしている。こうした隙を突くかのようにオウム真理教による地下鉄サリン事件も発生した。
民主党政権で初代首相となった鳩山由紀夫氏は、発言のブレが大きく信頼感に欠けていた。また、国際社会における軍事的抑止力の意義さえ理解していなかったので、日米同盟を揺るがし日本の国益を毀損する結果を招いた。
後を継いだ菅直人氏は、首相になってからも自衛隊の最高指揮官であるという認識も持ち合わせていなかったと言われる。