2011年3月11日に発生した三陸沖を震源とする「東北関東大震災」は、マグニチュード9.0の地震と大津波により甚大な被害をもたらしました。

 この大震災によって原子力災害が発生し、被害は、政府や原子力安全・保安院、東電、マスコミの発表に反して日増しに拡大しつつあります。

 今、喫緊の課題となっている原発事故に関連して、自衛隊の原子力災害派遣活動について国民の皆様に緊急にお知らせしたいと思います。

1 原子力災害派遣とは何か

 3月11日、北沢俊美防衛大臣は原子力緊急事態宣言の発令を受けて、自衛隊に原子力災害派遣命令を発令しました。

 ここで原子力災害派遣について振り返ります。1999年10月に茨城県東海村で発生したJCOウラン加工工場臨界事故の教訓を踏まえて、同年12月に原子力防災対策のため「原子力災害対策特別措置法」が制定されました。

 これを受けて、自衛隊法が改正され「原子力災害派遣」の規定が新設されました。

 原子力災害派遣(自衛隊法第83条の3)は、自衛隊法第3条で規定されている「いわゆる本来任務」の中の「第1項のいわゆる従たる任務」です。

 自衛隊の主たる任務は、防衛出動です。これは、直接侵略および間接侵略に対し我が国を防衛することです。そして、必要に応じ、公共の秩序維持に当たるために行うのが、治安出動、災害派遣や原子力災害派遣などの「従たる任務」です。

 この「必要に応じ、公共の秩序維持に当たる」とは、本来、公共の秩序維持は警察機関の任務であって、警察機関のみでは対処困難な場合に自衛隊が対処するという意味です。

 「従たる任務」という観点から見ると、3月13日に菅直人政権は、自衛隊派遣を5万人体制から早々に10万人体制へ増強するよう打ち出しました。

 しかし、領土問題などの極東情勢が緊張している今、「主たる任務」を手薄にすることの意味を踏まえた10万人体制の決断だったのか、疑問が残ります。

 放射線が異常な水準で原子力事業所外に放出される事態などの原子力緊急事態が発生した場合に、内閣総理大臣が「原子力緊急事態宣言」を発出します。今回は、3月11日に発令されました。

 これを受けて内閣府に「原子力災害対策本部」が設置されます。この災害対策本部長は、内閣総理大臣です。そして、この原子力災害対策本部長が、必要に応じて、防衛大臣に対し自衛隊の部隊等の支援を要請します。

 この要請を受けて、防衛大臣は、自衛隊に派遣命令を発令します。それが、原子力災害派遣です。

 原子力災害派遣における自衛隊の活動内容は、災害の状況、本部長の要請内容、人員・装備の状況によって異なりますが、主に、モニタリング支援、被害状況把握、住民の避難援助、行方不明者などの捜索救助、消防活動、応急医療、救護、人員および物資の緊急輸送、危険物の保安及び除去です。

 自衛官の職務執行については、災害派遣と同じであり、警察権の準用です。火器および弾薬は携行しません(防衛大臣が別命する場合を除く)。

 今回は、原子力発電所外における放射線検知と、被曝者の除染を行うとともに、原子力発電所内における消火と給水業務に当たっています。