集団内の感染率低下が、非接種の人の感染リスクを低下

 では、HPVワクチンは社会に、どのような影響を与えるだろうか。麻疹や風疹に対するワクチンは、ワクチン接種を推奨することで、集団内の感染率を低下させ、接種していない人の感染のリスクを低下させることが知られている。この現象を集団免疫と呼ぶ。

 HPVは性感染症なのだが、HPVワクチンの集団免疫効果はどうだろうか。これについても、研究が進んでいる。

 2012年7月、米シンシナティ小児病院の研究者たちが、HPVワクチンがカバーするHPV-6、-11、 -16、-18の感染率が、ワクチン接種者で69%、非接種者で49%減少したと報告した。HPVワクチンの集団免疫効果を示した初めての研究だった。

 2016年9月には続報が米国の『Clinical Infectious Disease』誌に報告され、HPVワクチンの接種率が7割を超えたシンシナティでは、ワクチン接種者の感染率は91%、非接種者の感染率は32%低下していたことが確認された。

 さらに同様の研究結果は、別の研究グループからも報告されている。2016年2月、米国の疾病予防センター(CDC)の研究者たちは、接種プログラムが導入された2006年から6年間の、米国の14歳から19歳の女性におけるワクチンがカバーするタイプのHPV感染率は、ワクチン接種者で64%、非接種者で34%低下していたと報告した。複数のグループから一致する結果が報告され、ワクチンの集団免疫効果は裏付けられた。

 接種時期に関する研究も進んでいる。HPVワクチンが、性交歴のある女性にも効くのかどうかという点については、まだコンセンサスはない。だが2014年9月には、オーストラリアの研究者が、HPVワクチンが25歳以上の女性にも有効であることを示した。その年代の多くの女性には性交歴があるため、持続感染への抵抗効果、あるいは再感染を予防する可能性が示唆されたのだ。

 HPVワクチンが初めて承認されたのは2006年6月、米国においてのことだ。米メルク社の4価ワクチンであるガーダシルが承認された。当時の接種対象は9歳~26歳の女性だったが、一連の研究を受けて、米食品医薬品局(FDA)は27歳~45歳の女性に適応を拡大した。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
「政府」「医師会」「メディア」の無知と沈黙が引き起こした「強制不妊」
年総額600億円超!「医師」へのカネ払いが多い「製薬企業」の特徴
製薬企業から謝礼金「270億円」もらう医師の「本音」