このような研究成果を世界の医学界は積極的に社会に訴え、一部は政策に反映されている。

 例えば、2011年10月に米国CDCの諮問委員会が、2012年2月には米国小児科学会が、男児・男性にもガーダシルの接種を推奨することを公表した。米国では男児もガーダシル接種の対象に含まれている。

 米国での現在の問題は接種率が低いことだ。2015年7月、『米国医師会誌』はプリンストン大学の研究者の報告を掲載した。彼らは、米国でHPVワクチンの接種を義務づけているのはワシントン特別区と2州だけであること、接種率は目標の80%を大幅に下回り、3回接種を済ませている思春期の女児は38%、男児は14%に過ぎないと指摘した。

 この状況を受けて、小児科や感染症の専門誌では近年、どうすればHPVワクチン接種率を高めることができるかという研究が数多く紹介されている。

 例えば、2016年12月、米ノースカロライナ大学の研究者たちは、HPVワクチンの接種率を向上させるには、医師が保護者に、その必要性をはっきりと説明することが有用であると報告している。HPVワクチンに関する議論がタブー視され、接種率がほぼゼロの日本とは雲泥の差である。

WHOは日本でのワクチン騒動を意識した声明

 では、マスコミが喧伝し、多くの国民が関心を抱く副作用についてはどうなっているだろう。こちらについても、数多くの研究成果が報告されている。

 まずは2012年10月に、米国の医療保険会社であるカイザー・パーマネンテの医師たちが、約19万人の若年女性がガーダシルを接種後に救急外来を受診、あるいは入院したかを調べたが、特に大きな問題はなかったと小児科専門誌に報告した。

 同月には、同じくカイザー・パーマネンテの医師たちが、HPVワクチンは接種した女児たちの性行動に特に影響を与えなかったことを、小児科専門誌に発表している。

 さらに2013年10月には、スウェーデンの研究者たちが英国の医学誌『BMJ』に、HPVワクチンが自己免疫疾患、神経疾患、静脈血栓症を増加させなかったこと、2014年6月にはデンマークの研究者たちが『米国医師会誌』に、深部静脈血栓症を増加させなかったこと、2015年9月には米国国立衛生研究所の研究者たちが英『BMJ』誌に、妊娠に悪影響を与えないことを報告している。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
「政府」「医師会」「メディア」の無知と沈黙が引き起こした「強制不妊」
年総額600億円超!「医師」へのカネ払いが多い「製薬企業」の特徴
製薬企業から謝礼金「270億円」もらう医師の「本音」