特に注目されているのは頭頸部がんだ。2011年10月に米国がん研究所の研究者が、1984年から2004年の間に収集した271の中咽頭がんのサンプルを調べたところ、HPVに感染していたのは、1984年~89年は16%だったのに、2000年~04年は72%に増加していたと報告した。

 2012年1月には米オハイオ州立大学の研究者たちが、14歳~69歳の健常男女5579人を対象に口腔内のHPVの感染状況を調べたところ、感染率は10.1%だったと報告した。これは女性の3.6%より統計的に有意に高かった。

 頭頸部がんは男性に多いがんだ。これまで喫煙との関係が指摘されていたが、近年、喫煙率は低下傾向にある。現状はむしろ、HPVの影響が顕在化したのかもしれない。専門家たちは、いまや全世界の頭頸部がんの7~9割はHPVによると考えている。

 HPVと関連するがんは、これだけではなさそうだ。2011年には世界保健機関(WHO)の一機関である国際がん研究機関(IARC)が、肺がんとHPV感染の関係を、2013年にはオーストラリアの研究者が食道がんとHPV感染の関係を報告した。因果関係は確立していないが、研究者はHPV感染が多くのがんの発症に関係していると考えている。

現在の問題は接種率の低さ

 当然だが、このようながんに対してもHPVワクチンによる予防が試みられている。

 2011年10月には米メルク社は、男性同性愛者を対象にガーダシルの肛門がん(上皮内腫瘍)の予防効果を検討した研究結果を、世界最高峰の米国『ニューイングランド医学誌』に報告した。この研究によると、ガーダシル投与により、肛門がんは半減していた。

 頭頸部がんに関しては、いまだ確定的なデータはないが、2015年5月にオランダの研究者たちが、女児とともに男児にもHPVワクチンを接種することで、男性の頭頸部がんなどで蒙る逸失利益(本文ではQALYsという指標を用いている)を37%低下させることができると報告した。

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