村中さんの記事とは、『朝日新聞』が2017年12月19日に掲載した、英科学誌『ネイチャー』などが主催するジョン・マドックス賞を受賞したことを報じたものだ。村中氏は、一貫して、HPVワクチンの副反応騒動は医学的な根拠がなく、一部の活動家や研究者の影響を受けていると主張してきた。権威ある『ネイチャー』の編集部が彼女を表彰したということは、世界の科学界は村中氏の主張を支持したことを意味する。HPVの副反応を強調し続けた『朝日新聞』の報道は適切でなかったと言っていい。

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 人は誰しも間違える。副作用が疑われた際、マスコミが被害者の視点で報じるのは当然だ。ただ、当初の報道が不適切と分かったら、頬被りしてはいけない。医学研究は日進月歩だ。正確な情報を国民に伝えねば、国民が医学の進歩の恩恵を享受する機会を奪ってしまう。HPVワクチンを打つべきか、打たざるべきか、決めるのは国民だ。そのためには、国民に正確な情報を提示しなければならない。それができるのはメディアだけだ。本稿では、『フォーサイト』というメディアの場をお借りして、HPVワクチンの研究の現状をご紹介したい。

今年1月に「予防効果あり」の報告

 まずは有効性だ。2011年6月、オーストラリアの研究者たちは、英国の医学誌『ランセット』に、4価のHPVワクチンであるガーダシルの接種プログラムの導入後2年で、18歳未満の女性から、前癌病変である高度異形成が38%低下したと報告した。

 2014年3月には、同じくオーストラリアのグループが英国の医学誌『BMJ』に続報を発表し、高度異形成を46%減らしたと報告した。

 前癌病変である異形成の発症を抑制することについては、カナダなど他の国からも報告されており、医学的なコンセンサスといっていい。

 一方、HPVワクチンの接種プログラムが導入されてからまだ10年程度しか経っていない現在、子宮頸がんの予防効果についてのコンセンサスはない。ただ今年1月、フィンランドの研究者が、14~19歳の約2万7000人を7年間フォローしたところ、子宮頸がんの発症率はワクチン非接種群で10万人あたり6.4人だったが、接種群では0だったと『International Journal of Cancer』誌に報告した。今後、子宮頸がんの予防効果については、他のグループからも報告されるだろう。その結果も踏まえ、近いうちにコンセンサスが形成されると考えている。

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