イエメン泥沼化がもたらす世界経済への悪影響

原油価格高騰がバブル崩壊をもたらす危険

2017.12.08(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51788
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 フーシ派が産油国であるサウジアラビアとUAEにダメージを与えるために今後マンデブ海峡を通過する原油タンカーにミサイル攻撃を行う可能性は排除できない。フーシ派は昨年10月、イエメン沖の紅海で米海軍のミサイル駆逐艦に対して数度にわたりミサイル攻撃を行ったとされている(フーシ派は関与を否定)。このミサイル攻撃に原油市場は反応しなかったが、主要産油国の減産努力で需給バランスが改善されつつある現在、「フーシ派による原油タンカーへのミサイル攻撃」という記事が報じられれば、原油価格が急騰するかもしれないのである。

中東の地政学リスクがバブルを終わらせる?

 世界経済はサブプライム危機発生から10年を経て、各国の中央銀行の金融緩和などのおかげで金融市場を中心に改善された。しかし、国際決済銀行(BIS)が12月3日に「株価の評価が泡立っている」と指摘したように、主要金融機関の間ではこのところ「株価が割高だ」と警戒する動きが強まっている(12月4日付ブルームバーグ)。

 金利水準に加え、「世界経済に悪影響を及ぼすほど高くなく、また、世界経済にショックを与えるほど安くもない」という原油価格も、現在の株高を支える主要要因の1つである。

 金融市場が崩れるときにはジャンク債が真っ先に売られると言われるが、11月からジャンク債のスプレッド(信用リスクに応じて米国債に上乗せされる金利の幅)が拡大している(12月5日付東洋経済オンライン)。2016年前半に原油価格の下落によってシェール企業が大量倒産したとき、ジャンク債は暴落した。今後、中東地域の地政学リスクの上昇により原油価格が急騰すれば、「金利上昇」への警戒からジャンク債が暴落するばかりか、バブル化が指摘されて久しい中国経済までがいよいよハードランディングすることにもつながりかねない。

 ムハンマド皇太子の「サウジドリフト」(サウジアラビアの若者の間で流行る無謀で危険なドリフト運転)がもたらす地政学リスクについて日本では相変わらず関心が低いが、過去最大規模と言われるバブルを終わらせる「伏兵」になるかもしれない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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