イエメン泥沼化がもたらす世界経済への悪影響

原油価格高騰がバブル崩壊をもたらす危険

2017.12.08(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51788
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 だが、ムハンマド皇太子も腐敗の元凶であるシステムから生まれた存在であることに変わりはない(昨年夏、欧州でのバカンス中に5.5億ドルのヨットを即金で購入したとの報道があった)。「今やりたいと思っていることを実現できずに死ぬことを恐れる」とするムハンマド皇太子(11月23日付ニューヨーク・タイムズ)は、「国民の支援を梃子に改革を強硬に進めていく」のだろうが、成功する保証はない。

風雲急を告げるイエメン情勢

 サウジアラビアでは内政に加えてイエメン情勢の方が風雲急を告げている。

 ムハンマド皇太子が国防相に就任した直後(2015年3月)に軍事介入を始めたイエメン情勢は、ますます泥沼化している。サウジアラビアが主導するアラブ連合軍の空爆が伝えられる一方で、「サウジアラビア政府は8000人のスーダン軍兵士を傭兵として雇って戦闘を続けているが、傭兵の反乱や相互の殺し合いが多発し、苦戦している」との報道(11月26日付ZeroHedge)が気にかかる。

 イエメンでは12月4日、イスラム教シーア派の武装組織フーシが、サウジアラビアとの対話を志向したサレハ前大統領を殺害し、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)への攻撃を強める姿勢を鮮明にした。

 フーシ派は11月にサウジアラビアへのミサイル攻撃を繰り返し(ニューヨークタイムズは「4日に発射されたミサイルをサウジアラビアは迎撃に失敗した」と報じている)、12月3日にはUAEで建設中の原発に「ミサイルを発射して命中した」としている(UAE政府はこれを否定)。技術的な要因により原発施設に命中しなかったものの、発射されたミサイルはスカッド改良型の弾道ミサイルではなく高性能巡航ミサイル(射程2500キロメートル、高度110メートル以下で飛行するためレーダーで探知できない)だったとの観測がある(12月6日付ZeroHedge)。

 世界の海上原油輸送のチョークポイントとしてホルムズ海峡(日量約1700万バレル)やマラッカ海峡(日量約1500万バレル)は有名だが、イエメンとジプチやエリトリアの間に位置するバブ・エル・マンデブ海峡(以下、マンデブ海峡)も日量400万バレル以上の原油が運搬されている。最も幅が狭い部分は約29キロメートル(ホルムズ海峡は約34キロメートル)、海峡を通過することが極めて困難であることから、船乗りたちから「涙の門」と呼ばれている(下の地図)。

バブ・エル・マンデブ海峡の位置

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51788

 マンデブ海峡を囲む国々の治安もおぼつかない。イエメンに加えて対岸のエリトリアでは、エチオピアからの独立以降、25年にわたって独裁政治が続いており、世界の中でトップクラスの圧政国家である(アフリカの「北朝鮮」と呼ばれている)。10万人以上の死者が出たエチオピアとの戦争は和平合意が成立したものの、国境線に関する合意はできていない。エリトリアの南方には海賊問題で話題となったソマリアがある。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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