OPEC総会よりも心配なサウジのメルトダウン

絵空事ではない原油供給ストップ、日本の備えは大丈夫か

2017.11.24(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51682
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 王族を含む約50人の政府関係者が逮捕されたのは、その矢先の11月4日だった。

 拘束されたムトイブ前国家警備相は、独善的なムハンマド皇太子に批判的だったとされている。尋問中に軍による殴打や拷問を受け、現在は病院で治療を受けていると言われている(11月19日付時事通信)。

 11月20日付ブルームバーグは、「サウジアラビア国防省関係者14人が違法な金融協定の締結に関与したとして逮捕されたが、情報筋は『イエメン戦争における軍司令官の作戦失敗が真の逮捕の理由である』と述べた」と報じている。ムハンマド皇太子と軍部との関係は悪化の一途を辿っているように思えてならない(軍関係者によるムハンマド皇太子暗殺未遂事件が起こったとの未確認情報もある)。

「濡れ手に粟」の喜びは束の間

 当局は、逮捕された王子たちとの間で「『不正に得た』財産を放棄すれば釈放する」との合意を成立させたようだ(11月20日付ロイター)。逮捕された王子には、著名な投資家であるアルワリード王子も含まれており、サウジアラビア政府は、これにより最大1000億ドルの資産を確保できるのではないかとみられる。

 原油価格は上昇しているものの、サウジアラビアの原油輸出量は約655万バレルにまで減少しているため、原油売却収入が伸び悩んでいる。また、ムハンマド氏が今年6月皇太子に就任した「ご祝儀」として、昨年6月に実施した公務員給与の削減を遡って撤回したため、国家財政は「火の車」だったはずである(今年10月「サウジアラビア政府は2000億ドルの外貨準備を取り崩した」との情報が流れていた)。

 サウジアラビア財務省は「濡れ手に粟」だと喜んでいるかもしれないが、そうは問屋が卸さない。王族らが多数拘束された事件を契機に投資家が警戒感を強めているからだ(11月20日付日本経済新聞)。サウジアラビア国債への売り圧力が強まっていることから、今後、国際市場で国債を発行して資金調達を図ることが困難になる。

 さらに「王子たちが保有している巨額の金塊が没収される」との噂が飛び交っており(11月20日付日本経済新聞)、疑心暗鬼となった王子たちが個人資産を海外に移転しようと躍起になっている。汚職逮捕劇はいつ収拾がつくのか予測できない状況だ。

ドイツ、米国、中国の反応

 国民の関心を海外に逸らす目的のためか、サウジアラビア政府は最近レバノンにおけるイランの勢力拡大を声高に叫んでいる。これに対しドイツのガブリエル外務大臣は、11月17日、「サウジアラビア政府の挑発行為を欧州は黙って見ているわけにはいかない」と批判的なコメントを出した。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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