OPEC総会よりも心配なサウジのメルトダウン

絵空事ではない原油供給ストップ、日本の備えは大丈夫か

2017.11.24(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51682
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 筆者は2年前からサウジアラビア情勢を心配していたが、このところのサウジアラビアの「ドタバタ劇」により日本でも危機意識が高まってきたようである。

 11月18日付日本経済新聞は「サウジ政変 国王退位の影」と題する記事を1面トップに掲載し、その中で「サルマン国王はこの1カ月あまり不機嫌だった。生前に譲位する考えを周囲に打診したが、予想外に慎重な反応が返ってきた」と報じている

(日本経済新聞の現地記者が連日配信しているレポートは非常に参考になっているが、残念ながら欧米のメディアに比べていまだ踏み込みが足りないと言わざるを得ない。)

 9月頃からムハンマド皇太子への譲位が噂されていたが、障害となっているのは「ムハンマド皇太子が実施を決断したイエメンへの軍事侵攻」だと筆者は考えている。

 ムハンマド皇太子が国防大臣に就任した直後の2015年3月に、サウジアラビアが主導するアラブ連合軍のイエメンの空爆が開始された。だが当初の目的であるイスラム教シーア派反政府組織フーシの勢力を駆逐することができず、軍事費が増大するばかりである。イエメンでは700万人以上の市民が飢餓の恐れに直面していることから、国連安全保障理事会がサウジアラビア政府に対して「イエメンの国境封鎖を解除せよ」との声明を出す始末である。サウジアラビアの国際社会からの評判は悪化する一方である。

 ムハンマド皇太子が率いる国防軍(約10万人)はイエメン人傭兵を多数擁するなどの「アキレス腱」を抱えており、フーシ派を排除するための地上戦を展開できる状況にない。「戦果を挙げられずにイエメンへの軍事介入を止めれば、自らの権威が地に落ちる」と焦ったムハンマド皇太子は「国家警護隊」に頼らざるを得なくなったようだ。

 国家警護隊は国防軍と同規模の兵力を擁し、古くからサウド家に仕える超エリート部隊であると言われている。遊牧民「ベドウィン」のラクダ部隊の伝統を受け継ぐ勇猛果敢な国家警護隊であればイエメンでの地上戦に耐えうる、と考えたムハンマド皇太子は、兵士投入用の輸送ヘリ「ブラックホーク」などを米国から購入するなど国家警護隊の能力拡大を急いでいた(「選択」2017年11月号)。

 だが、泥沼化しているイエメンへの地上戦を、国家警護隊が引き受けるとは到底思えない。ムハンマド皇太子からの度重なる要請に反発した「国家警護隊をはじめとする軍部がクーデターを画策している」との噂も出ていた。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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