「ビジョン2030」を自ら台無しにするサウジ皇太子

強権的な汚職摘発が内戦勃発の予兆か

2017.11.10(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51564
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 拘束された王族には、世界的な投資家として知られるキングダム・ホールディング・カンパニーのアルワリード会長、アブドラー前国王の息子のムトイブ国家警備隊大臣らが含まれる。政府高官としては改革派とされるファキーフ経済計画相ら、企業家としては国内建設最大手であるビン・ラディン・グループのビン・ラディン会長(アルカイダのリーダーだったオサマ・ビン・ラディンの兄弟)やMBCテレビの最大株主であるイブラヒム氏らが含まれている。その多くはリヤドの「リッツ・カールトン」で拘束されているようだ。

 サウジアラビア政府はこれまで、国内政治の不安定化を避けるために有力者による不正については意図的に見逃してきたと言われている。しかし今回、サルマン国王・ムハンマド皇太子の親子は、自らの強大な政治的権力を前面に出して、構造的な問題にメスを入れた。既存の法律に従って汚職を裁くのではなく、強権的な手段による逮捕劇だった。

 6日、モジェブ司法長官が「汚職撲滅運動は始まったばかりだ」との認識を示した(11月6日付BBCNEWS)ように、国内では今後すべての国民が例外なく捜査の対象となる。中国の習近平政権がこれまで強力に実施してきた「反腐敗運動」がサウジアラビアでも繰り広げられる可能性がある。

改革に賛同する世界的投資家も拘束

 だが、汚職の摘発によってサルマン親子の権限が強化されることはあっても、サウド家全体に大きな亀裂亀裂が入るのではないかとの懸念が拭えない。

 筆者が注目するのは、ムトイブ国家警護隊大臣(65歳)の拘束である。ムトイブ氏はサルマン親子に対抗しうる唯一の王族と見なされていたからだ。

 アブドラ前国王の死去に伴い、2015年1月に就任したサルマン国王は直後に大規模な人事異動を行い、アブドラ前国王の息子たちを要職から解任した。その際、ムトイブ氏は国家警護隊大臣の職にとどまった。国家警護隊は国軍と並ぶ武力装置であり、アブドラ前国王が1963年に司令官になって以来50年以上にわたりアブドラ家による支配が続いてきた。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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