「ビジョン2030」を自ら台無しにするサウジ皇太子

強権的な汚職摘発が内戦勃発の予兆か

2017.11.10(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51564
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「ビジョン2030」では非石油収入を2015年の400億ドルから2020年までに4倍に、2030年までにさらに倍増させるのが目標である。だが、非石油収入の伸びは遅々として進んでいない。あてにできるのは、付加価値税収入など国民に痛みを伴う措置から生ずるものばかりである。一連の緊縮策のおかげもあり、サウジアラビアの財政均衡原油価格は2016年の1バレル=96.6ドルから今年は同70ドルにまで下落している(11月1日付OILPRICE)。

 国民への分配を増やすための「切り札」として、ムハンマド皇太子は10月24日、前述のフォーラムで、紅海沿岸の自由経済区に新都市を建設する計画を発表した。「NEOM」と名付けられた都市計画は新たな生活様式を最先端のテクノロジーによって実現することを謳い、国内外の投資家から合計5000億ドルの資金を確保するという。

 ムハンマド皇太子は「NEOMの建設により、2030年までにGDPが1000億ドル増加する」と鼻息が荒いが、「サウジアラビアの『ドバイ化計画』は20年遅れの代物だ」と揶揄する論調も出始めている(10月24日付ZeroHedge)。本計画は、一からまちづくりを行うなど元々リスクが大きい案件と見なされていた。今回の国内大富豪への弾圧や強権的手法による権力集中が煽る政情不安リスクの高まりで、国内外の投資家にとってますますネガティブなものになってしまったのではないだろうか(通貨リヤルの投げ売りが既に始まっている)。

 11月3日、中東地域で活発に事業展開する石油メジャーである仏トタールCEOは「サウジアラビアの社会経済改革は野心的すぎる。ムハンマド皇太子は旧ソ連のゴルバチョフ書記長の二の舞になるのではないか」と懸念を示した(11月4日付OILPRICE)。筆者はかつてムハンマド皇太子のことをフランス革命時のルイ16世にたとえたが、「上からの改革」を一方的に推し進めた啓蒙専制君主ルイ16世の末路を思うと、サウジアラビアの今後はますます心配だと言わざるをえない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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