「ビジョン2030」を自ら台無しにするサウジ皇太子

強権的な汚職摘発が内戦勃発の予兆か

2017.11.10(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51564
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 サウジアラビア政府は「今回のミサイル攻撃はイランによるものであり、『戦争行為』に等しい」との声明を発表しており(イラン側は関与を否定)、イエメンでの軍事作戦を強化する可能性が高い。イランとの協力関係を深めるレバノン首相は5日突然辞任を表明したが「サウジアラビア政府の圧力があったのでは」と囁かれている。

 イエメンなどを拠点として、反ムハンマド皇太子派がサウジアラビア国内でテロなどの非合法活動を続ければ、将来的に君主制の基盤を揺るがす火種に成長する危険性も否定できない。

 渦中の人であるムハンマド皇太子は、10月24日にリヤドで開かれた外国人投資家を招いた経済フォーラムで、「極めて保守的とされる国内の聖職者と決別し、同国を穏健で開かれた国にする」と語った(10月25日付AFP)。サウジアラビアでは、近代化の推進者として認識されていた第3代ファイサル国王が1975年に暗殺されて以降、厳格なイスラム主義が台頭した。ムハンマド皇太子は彼らと真っ向から対決することを国際社会に誓ったことになる。

 しかし、サウジアラビアを「開かれた国」にするのは決して容易ではない。

 サウジアラビアには国会に当たる「諮問評議会」があるが、定数150人に対し有権者は国王1人である(国王がすべての議員を任命する)。サウジアラビアは1932年にサウド家という豪族がアラビア半島の大半を武力で統一して建国されたが、憲法に相当する「統治基本法」が制定されたのは1993年である。諮問評議会も1993年に設立されたが、諮問評議会には立法権はなく、国王が制定した法案に助言を与える権限しか付与されていない。サウジアラビアは世界で数少ない「絶対王制」の国なのである。

 また、ムハンマド皇太子は経済改革だけではなく社会改革(女性の社会進出など)を含めた大改革を行おうとしているとされるが、人権団体によれば、相変わらず国内でジャーナリストが投獄され、深刻な人権侵害も続いている。

 それでも国民がこれまであまり不満を抱いてこなかったのは、原油売却で得られた富を政府が国民に分配してきたからだ。しかし、サルマン親子の下でその合意に綻びが出始めている。たとえばガソリン代等への補助金は既に削減されており、2018年1月からは付加価値税が導入される(税率5%)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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