歴史的減産合意でも産油国を待ち受ける「茨の道」

ベネズエラの「メルトダウン」は起きてしまうのか

2016.12.16(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48670
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 インフレ率が800%に達し慢性的なドル不足状態にあるベネズエラ政府は、原油生産を続けるのに必要な契約の一部支払いができなくなっている。これにより原油生産量は過去13年で最低水準に落ち込んでおり、中国政府は「融資の返済としての輸入(未返済金額は約200億ドル)が滞るのではないか」と気が気でない。

 このような状況を前にして、中国政府はベネズエラとの戦略的パートナーシップという方針を転換しつつある。PDVSAは2017年4月にも多額の債務償還を迎えるが、中国側が再び支援の手を差し伸べるかどうかは不透明である。

ベネズエラの「メルトダウン」が原油価格を引き下げる

 切羽詰まったベネズエラ政府は12月11日、「72時間以内に最高額紙幣の100ボリバルを撤廃しコインに転換する」と発表した。その理由は「密輸を防止し、食料品など生活必需品の不足に対応するため」としている。マドゥーロ大統領は「国境付近で活動する犯罪組織が紙幣を国内に持ち込む前に紙幣を無効にできる」として(2016年12月12日付BBC News)、コロンビアとの国境を72時間封鎖した。

 100ボリバルは、ここ数年で通貨としての価値をほぼ失いつつあった(米ドルに換算して約2セント(2.3円))。ベネズエラの中央銀行は「500ボリバルから2万ボリバルまで6種類の新紙幣を12月15日から流通させる」としている。だが、市中で流通するすべての100ボリバル紙幣を72時間でコインに替えるのは不可能である。

 2017年にインフレ率が2000%以上になると予想されるベネズエラの絶望的な試みにより、PDVSAの運命は尽きたと言っても過言ではない。日量200万バレル近くの原油を生産しているPDVSAが操業不能になれば、世界の原油市場が供給不足に陥ることは必至である。

 一方で、ベネズエラ全体がデフォルト状態になれば、世界の金融市場への悪影響も懸念される。レーガノミクスの副作用で引き起こされた1980年代の中南米諸国の債務危機がウォール街を直撃したように、トランポノミクスで沸き立つ世界の金融市場の息の根を止めかねないからである。

 筆者は現在の原油価格はバブル要因で1バレル=20ドル程度嵩上げされていると見ている。ベネズエラの「メルトダウン」は原油価格にとって大きな下げ要因になるのではないだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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