歴史的減産合意でも産油国を待ち受ける「茨の道」

ベネズエラの「メルトダウン」は起きてしまうのか

2016.12.16(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48670
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サウジで副皇太子の求心力が急速に低下か

 サウジアラビアの動向も気がかりである。

 今回の減産合意は「ムハンマド副皇太子の意向が反映している」とする向きがある。しかし、「自らが減産の大半を担い、それにより原油価格上昇を目指す」という対応は従来と全く変わりがない。それは改革派の騎手であるムハンマド副皇太子が最も嫌うやり方である。そもそも原油価格が上昇すれば、脱石油依存を掲げる「ビジョン2030」のモメンタムもなくなり、過去のケースと同様に改革は「掛け声倒れ」になってしまう。

 ムハンマド副皇太子が軍事介入を主導するイエメン情勢が悪化し、4月以上にイランとの関係が険悪になっている中で、「敵に塩を送る」決断をしたとは到底思えない。

 筆者は寡聞にしてムハンマド副皇太子の動静をつかんでいないが、11月下旬のフィナンシャルタイムズが「ムハンマド副皇太子の蜜月が終わった」と報じたように、今回の合意はムハンマド副皇太子の求心力が急速に低下している証左ではないだろうか。

 12月12日付の米ビジネス情報サイト「Zero Hedge」は「迫り来るサウジアラビアの分断」と題する記事を掲載し、初代国王の孫の世代が初めて王位を継承することになるサウジアラビアでの王族の争いの深刻さを報じている。「サウジアラビアがいくつかの地域に分裂する」との予測はともかくとしても、原油価格が再び大幅に下落すれば、王家内の内紛が激化し、サウジアラビアの政治体制が著しく不安定化する可能性が高まっている。

 世界の原油市場を巡る情勢は「一難去ってまた一難」である。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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