セサミンだけでは語り尽くせないゴマの健康成分

「あればあったでよい」食材、ゴマの不思議(後篇)

2015.09.18(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
ゴマの粒(タネ)。殻のなかには健康に関わるさまざまな成分が含まれている

 今回は、身近な食材「ゴマ」の歴史と科学を前後篇で追っている。

 前篇では、日本人がゴマとどう接してきたか、その変遷を見てきた。食材に、燃料に、そして薬にと、日本人はゴマにさまざまな役割をもたせてきた。とりわけ薬としてのゴマは、江戸時代の由緒ある本草書にも五臓、血脈、腸をよくするなどと効能が謳われ、さながら“万能薬”の扱いを受けていたようだ。

 それから時は経ち、科学の発展した現代、「ゴマには科学的に健康効果がある」ということがいえるようになってきた。

 その最たるものとして、いま世間で知られているのは「セサミン」だろう。サントリーが1993年に発売した栄養補助食品で、「1粒にゴマ約1000粒分」「若々しい毎日に役立つ可能性がある」などと宣伝されている。特許が切れたいまは、ほかの企業も同様の商品名で発売している。

 だが、「ゴマで健康といえばセサミン」で片づけてしまうのはもったいない、と思わせるような研究成果が日本の大学から上がっているのをご存知だろうか。後篇の今回は、健康効果をもつゴマの成分を発見・解明している三重大学大学院生物資源学研究科准教授の勝崎裕隆氏に「セサミンだけではないゴマの健康成分」について話を聞いた。

 腸内細菌の活躍で抗酸化作用を示す物質を発見

 ゴマの健康効果に科学的な視点が注がれたのは1980年代だ。その出発点は「なぜ、ゴマ油は酸化しにくいのか」という疑問にあった。

 当初、ゴマの酸化を防いでいるのは、ゴマ油に入っている「セサモール」という物質だと考えられていた。だが、分量的にセサモールだけではどうもつじつまが合わない。そこで、研究者たちは抗酸化作用をもたらす他のゴマ成分を探した。

 すると、ゴマには「ゴマリグナン」と総称される化合物が多く含まれていて、抗酸化作用をもっていることが分かってきた。よく知られるセサミンも、こうした研究の流れで見つかったゴマリグナンの1つである。

 だが、さらに、ゴマの抗酸化作用は「ゴマリグナン」の類だけではないとする見方が出てきた。

 勝崎氏は名古屋大学の学生だった1993年に、ゴマリグナン以外にも、ゴマに多く含まれる成分が抗酸化作用を持つのではないかと考えた。

 「というのも、ゴマリグナンをほとんど含まない、ゴマのかすの部分を動物に食べさせても、抗酸化作用の傾向が見られたのです。かすの中に、ゴマリグナン以外の何かが含まれているはずだと思ったのです」

勝崎裕隆氏。三重大学大学院生物資源学研究科生物機能化学研究室准教授。三重大学農学部卒業。名古屋大学大学院農学研究科博士課程・博士後期課程満了、博士(農学)。1993年より三重大学へ。生物資源学部助手、助教授、大学院生物資源学研究科助教授を務め、2007年より現職。専門分野は天然物化学、食品科学、生物機能化学など。事務局長を務める「日本ゴマ科学会」は、2015年10月3日(土)、30周年となる大会を愛知県蒲郡市で開催する予定
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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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