宣伝過剰?「万能薬」だった江戸時代のゴマ

「あればあったでよい」食材、ゴマの不思議(前篇)

2015.09.11(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
白ゴマは控えめな味で、すりゴマ、練りゴマ、ゴマ豆腐などに向いている。黒ゴマはコクがあるので、香りある野菜の和物などに。他に種(タネ)の色から金ゴマも

 絶対になければならないという食材はない。その食材がなくても、別の食材から栄養を得ることはできる。仮に、この世から米が消え去っても、日本人はパンや麺を主食にどうにか食いつないでいくことだろう。

 その食材がなくなっても、あまり深刻にはならないが、その食材があれば使うし、使えば使ったなりの価値が生まれるものだ。

 そんな「あればあったでよい」的な食材の1つが、「ゴマ」ではないだろうか。

 ご飯にかけたふりかけが、たまたまゴマ入りだった。テーブルにゴマが置いてあるのでなんとなくラーメンに入れた。この天ぷら、どうやら使っているのはゴマ油のようだ・・・。ゴマがなければだめということではない。でもゴマが加われば、確かに味は変わる。

 健康効果を言うときのゴマの立ち位置もそうだ。炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの必須栄養素をゴマから摂る必要はない。それでいて、ゴマ成分の健康効果を謳うサプリメントはとても売れていると聞く。

 そんな、「あればあったでよい」食材だからこそ、ゴマにはまだあまり知られていない事実もあるのではないか。そんなことを考えて、今回は「ゴマの謎」を追うことにした。

 前篇では、日本人とゴマの関わりあいの歴史を追っていく。探れば探るほど、ゴマには謎が多いことがわかる。

 後篇では、現代の科学の視点で、ゴマの未知なる可能性を解明している研究者に話を聞く。「ゴマ」「科学」と来れば、かのサプリメント「セサミン」のことを思い浮かべる人は多いだろう。だが、コマーシャルの光がまぶしすぎて、ゴマのより多様な魅力が私たちの目には届いていないようだ。

 まずは、日本におけるゴマの歴史をたどってみる。

正倉院文書から日本最古の「胡麻」記述

 「ゴマ」は「胡麻」と書く。どことなく古めかしい漢字の綴りのため「ゴマは日本固有の食材」と思っている人もいるかもしれない。だが、ゴマの起源地は、アフリカのサバンナとされる。そこから世界に伝播して、日本にも伝わったようだ。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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