満腹な午後の眠気はどうしたら吹き飛ばせるのか

昼食後の眠気、その原因と対策(後篇)

2015.08.21(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 昼食をとった後、眠気が急に襲ってくる。どうしてなのか。どうにかならないのか。そんな午後の時間帯の、身近かつ切実な問題を前後篇で取り上げている。

 素朴な疑問に答えてくれているのは金沢大学医薬保健研究域医学系教授の櫻井武氏だ。摂食と睡眠という、実は深い両者の関係性を解明してきた。また、覚醒や摂食の制御に関わる脳内物質「オレキシン」の発見者としても知られる。

 前篇では、昼食後の眠気の主な原因を櫻井氏に聞いた。ちょうど昼食後の時間帯に体内時計の覚醒への出力が低下すること、食後の血糖値上昇でオレキシンなどの脳内覚醒物質をつくる神経細胞の活動が低下すること、報酬を得て体が満足状態になることなどが昼食後の眠気につながるという。ただし、眠気のベースには前日の睡眠不足もあるという重要な指摘もあった。

 今回の後篇では、櫻井氏に、昼食後の眠気にどう対処すればよいのかを聞いていくことにする。

「昼食後の眠気」の主犯格は睡眠不足

櫻井武(さくらい たけし)氏。金沢大学医薬保健研究域医学系教授。博士(医学)。1964年、東京生まれ。筑波大学大学院医学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、筑波大学基礎医学系講師、テキサス大学ハワード・ヒューズ医学研究所研究員、筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授を経て、現職。1998年、覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を発見。新しい神経ペプチドの探索や機能解析を進めつつ、睡眠・覚醒機構や摂食機構、情動の制御機構の解明を目指す。「つくば奨励賞」「第14回安藤百福賞大賞」「第65回中日文化賞」「平成25年度文部科学省科学技術賞」など受賞歴多数。著書に『食欲の科学』『睡眠の科学』(ともに講談社ブルーバックス)『睡眠障害のなぞを解く』(講談社健康ライブラリー)などがある。

――前篇では、食後の眠気の原因の1つに、食後の血糖値上昇により、覚醒をもたらすオレキシンがあまりつくられなくなるという話がありました。そうだとすると、オレキシンの働きが弱くならない程度に、昼食の量を抑えれば眠くならないということでしょうか?

櫻井武氏(以下、敬称略) そこまで考える必要はないと思います。たしかに、食後の血糖値上昇や、午後の時間帯の覚醒系への出力の一時的低下などは眠気の原因となりますが、それらが眠気に寄与する度合いは、それほど大きくはないと私は思っています。

――むしろ、前篇でもお話があったように、睡眠不足が問題だと・・・。そうすると、昼食後の眠気を防ぐには、日ごろから十分な睡眠をとることが重要ということでしょうか?

櫻井 そうです。そちらのほうが大事だと思います。日本人の睡眠時間の短さは、韓国と1、2を争う世界ワーストレベルです。電車や会議の場でこんなによく眠っている国民は外国にはいません。

 寝不足になると、睡眠の必要性を意味する「睡眠圧(スリーププレッシャー)」が貯まります。十分に寝れば睡眠圧は解消されるのですが、多くの日本人は睡眠圧を貯めたまま、次の覚醒を迎えることになります。睡眠負債が貯まっていく状況です。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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