生肉を食べるのはこんなに危険

リスクが高いのはレバ刺しだけではない

2014.08.08(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要
「食肉を生で食べることはあるか」に対する回答。対象は20歳以上の都民1000人(参考:東京都の食肉の生食等に関する実態調査・2011年度より)

 東京都は、都民に対して「食肉の生食等に関する実態調査」を行った。2011年度の調査では、消費者1000人に食肉を生で食べることがあるか尋ねたところ、「よく食べる」「たまに食べる」に「以前は食べていたがやめた」と回答した人を加えると6割を占めた。生肉による食中毒も多く発生しており、20~30代の患者が多い。

 もともと日本人は魚を生で食べる習慣があるので、その影響か食肉の生食も受け入れやすいようである。かつては、生肉を食べてはいけないと頻繁に言われたものだが、食品衛生や安全管理の質の向上が吹聴されるにつれて、そんな言葉は聞かれなくなってしまった。B級グルメの流行なども手伝って、様々な飲食店が生肉メニューを提供するようになった。若者を中心に生肉に対する意識は変化し、ここ数年生肉ブームが続いている。

焼き肉とともに広まった生肉食

 人類が火を使って、調理を始めたのはいまから200万年前のこと。火であぶることで肉を安全に食べられるようになった。固い肉も食べやすくなり、消化もよくなった。さらに、様々な調理法によっておいしく食べる方法を編み出した。

 日本人の肉食の歴史をひもとくと、縄文時代は狩猟で得た鹿や猪の肉を焼く、煮るなどして食べていた。仏教伝来以降、表向きでは肉食が禁止され、再び本格的に肉を食べるようになったのは明治時代以降のことだ。

 では、どうして現代の日本人は、肉を生で食べ始めるようになったのか。

 内臓を食べるようになったのは、戦争による食糧難に肉の代用として使われたことによる。闇市で、在日韓国・朝鮮人が牛のハツ(心臓)を焼いて売り出したところ、人気が出たので、他の内臓類も工夫し、売られるようになった。

 朝鮮半島には、内臓を食べる習慣はあまりなかったが、ユッケのような生肉を使った料理があった。そこで、在日韓国・朝鮮人が、刺身の好きな日本人向けにアレンジしたことで、レバ刺しなどの生肉メニューが生まれたと考えられている。レバ刺しは、大阪の鶴橋のようなコリアンタウンから焼肉とともに広がったのだろう。焼き肉店が増えるにつれて、生肉を食べる人も増え、ユッケやレバ刺しは人気メニューとなった。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。