「熟成肉」の人気が高まっている。まだ食べたことはなくても、気になっている人も多いのではないだろうか。また、熟成肉がどんな肉かをあまり知らずに食べている人もいるかもしれない。かくいう筆者も気になるけれど、これまで食べたことがなかった。熟成肉とはどんな肉なのかを探ってみた。
熟成肉ブームが到来
ステーキハウスや焼肉屋の店頭に「熟成肉」の文字が並ぶ。牛丼チェーン店でも熟成肉を使ったメニューが登場した。
熟成肉とは、より長く寝かせた肉のこと。熟成していない肉に比べて旨味や風味が増している上に、肉はやわらかい。
欧米で熟成肉は「エイジングビーフ」としてよく知られたメニューだ。日本での熟成肉ブームは、食肉販売業の日本人がニューヨークのステーキハウスで、肉を包装せず、専用冷蔵庫で風を当てて水分を飛ばしてつくる「ドライエイジングビーフ」を食べたことに端を発する。「これはおいしいし、目新しい」と目をつけ、数年前に技術を取り入れたことで日本でも火が付いた。
なお、ウェットエイジングという方法もある。これは肉を布でまいたり、真空包装をしたりして冷蔵庫で保管する方法だ。どちらの製法も酵素の働きによりタンパク質が分解し、アミノ酸やペプチドに変化することで、旨味が増す。
「熟成肉」の定義とは?
「肉は腐る直前がおいしい」というが、熟成肉は腐りかけの肉ではない。腐るとは、腐敗細菌が繁殖し、タンパク質などが分解されて悪臭や有害物質が発生すること。一方、熟成肉では、温度や湿度をコントロールして肉を寝かせることにより、腐敗細菌の働きを抑えつつ、肉が本来もつ酵素や有用細菌を働かせて肉の熟成を進めるのである。
ドライエイジングでは、水分を蒸発させるため、うまみが凝縮する。熟成後は、肉のまわりにびっしりカビが生え、表面の色も変わるが、外側をきれいに取り除くときれいな赤い肉が現れる。「熟成香」とよばれるナッツのような独特な香りも生まれる。