「インチキ」の声も、水素水のどこが問題なのか?

「健康っぽさ」を印象づけるメーカーの罪

2016.06.10(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
スーパーマーケットなどで市販されている「水素水」の数々

 「水素水」がかなりの叩かれようだ。

 4月に、大手飲料メーカー伊藤園が新商品を発売したことなどを機に、「水素水ブーム」の雰囲気もあったが、水素水に付いて回る「体によい」という評判に「インチキ」の声が上がっていった。そして、女優が愛用しているのを揶揄する声が聞かれたり、伊勢志摩サミットで配布されていたことに、「日本の恥」「日本人のリテラシーを疑われるようなものを並べるのはやめて」とつぶやかれたりしている。

 健康によいとされる水は、とかく「怪しい」「胡散臭い」と言われ、議論の的になりやすい。今回の水素水騒動をどう考えたらよいのだろうか。

「活性水素水」は問題外

 最初に、この話題から一旦除外しておきたいのは「活性水素水」と呼ばれる類の水素水だ。理由は、“問題外”で取り上げるまでもないからとなる。

 水素がとる状態にはいくつかあり、うち水素原子が単体で存在するものが「活性水素」と呼ばれている。この活性水素が溶けているとメーカーなどに喧伝されている水が「活性水素水」だ。1997年ごろから、九州大学の白畑實隆氏が、活性水素を含む水は抗酸化作用により糖尿病やがんを抑える効果をもつと提唱していた。

 だが、当コラムでも既報(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44991)のとおり、杏林大学の平岡厚氏が2012年に行った実験により、「活性水素水」と分類できる水には活性水素など存在しないことが確認されている。活性水素はあまりに不安定な物質のため、水に安定的に存在し続けることはありえない。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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