「美と健康の可能性」「カラダによい」「体内環境をサポート」。こうした健康効果の宣伝文句とともに、聞き慣れない物質名が冠された水が売られている。「機能水」とも呼ばれているが、本当に健康に機能するのか、機能するとすればどんな理由によるものか、疑問は尽きない。

 これらの水の真相を知るべく、前後篇で専門家に話を聞いている。応じてくれたのは元杏林大学保健学部准教授の平岡厚氏。健康によいと宣伝される水の作用を実際に試験で検証し、論文に発表した経験をもつ人物だ。

前篇では、平岡氏の「『飲むと健康に良い』と宣伝されている諸水製品類の実態の検討」という論文の内容をもとに、「活性酸素を消去する成分が含まれており、体内で抗酸化作用を示す」とする水と、「水分子のクラスターサイズ(集合規模)が小さく、生体組織への吸収率が高い」とする水について、本当に効果があるのか尋ねた。結論は、そうした水は“毒にも薬にもならない”ものだったというものだ。

 世の中で聞かれる「機能水」の多様さはそれだけにとどまらない。そこで今回の後篇では平岡氏に、巷でよく耳にする「ナントカ水」と名のつくに水ついて解明されていることを整理してもらうとともに、それらの水をどう考えたらよいのか見解を示してもらうことにする。

アルカリイオン水、高濃度水素水、その正体を解く

――前篇では、健康によいと宣伝される「機能水」のうち、活性酸素消去作用があるとされる水と、水分子のクラスターを小さくしたとされる水について聞きました。試験ではどちらも体への作用をもたらすような結果には至らなかったとのことでした。

 インターネットや店頭を改めて見てみると、さらにいろいろな宣伝文句や商品名で水が売られていますね。まず、よく耳にする水として「アルカリイオン水」がありますが、これはどういったものですか?

平岡厚氏(以下、敬称略) アルカリイオン水は「電解還元水」と呼ばれるものと同じと考えてよいと思います。電解とは電気分解のこと。食塩水のような電解質を溶かした水を電気分解すると、プラス極周辺の水では活性酸素を発生させる物質が溶けて酸化力が増すのに対し、マイナス極周辺の水では溶けている水素ガスが増えて還元力が増すのです。

 このマイナス極周辺の水は、水酸イオン(OH-)の濃度が高くアルカリ性を示すので、商品名として「アルカリイオン水」と呼ばれているわけです。