先週、2013年を振り返り読者ランキングを調べていたら、尖閣諸島を巡る日中の軍事的対立に関する記事が圧倒的に多かったことに驚かされた。恐らく読者の方々も同じ感想だったと思う。「尖閣諸島の問題が国民の間で風化し始めている」と警鐘を鳴らす軍事専門家は多いが、実際には熱しやすく冷めやすい国民性は、こと尖閣諸島問題に関する限り“汚名返上”されているようである。
元海将たちが著した『日中海戦はあるか』
そんなことを思っていたら、机の上に1冊の本がまだ一度も開かれずに置かれているのに気づいた。『日中海戦はあるか』(きずな出版、税抜き2800円)というドキリとする題名の本である。
副題には「拡大する中国の海洋進出と、日本の対応」とある。出版されたのは2013年10月15日となっていた。
何で今まで開きもしなかったのだろうと思ったが、そんな詮索はやめることにして読み始めた。
するとこれが面白い。どんどん引き込まれて一気に読み終えてしまった。
専門書に近いと思うが、文章が平易で専門的なところには分かりやすい例えが必ずと言っていいほど引かれているので専門知識がなくても読みやすい。
今回はこの本を紹介ししようと思う。筆者・監修者は実はJBpressにも寄稿してもらったことがある夏川和也さん、岡俊彦さん、保井信治さんである。
3人とも海上自衛隊の元海将であり、夏川さんは海上幕僚長を務めたあと第22代統合幕僚会議議長に就任した。海の防衛に関するプロ中のプロの人たちと言える。
「日中海戦はあるか」と題名で問われた本の内容は、結論から言うと海上自衛隊と中国海軍の彼我の差は依然大きく、単純に軍事バランスから考えれば中国は日本に侵攻することはできないというもの。
ただし、中国を侮ったり対応を間違えたりすればその限りではなく、日本の隙を見つけて必ず行動に移してくるという警鐘も忘れていない。
この本の面白さは、巨額の軍事費を投じて大軍拡を進めている中国が、歴史は繰り返すの諺どおり、技術力の高さより量や大きさを重視する“伝統”が、結局は砂上の楼閣に近いものを作り上げているということを、詳しい技術的な解説で証明してくれていることだろう。