(英エコノミスト誌 2014年1月4日号)

安倍晋三首相が危険な賭けに出た。

安倍首相の靖国参拝、米国は「心から失望」 分析

2013年12月26日、参拝のため都内の靖国神社を訪れた安倍晋三首相〔AFPBB News

 12月26日、安倍晋三氏が日本の首相として7年ぶりに靖国神社に参拝したことは、外交上の大失態だったように見える。

 中国、韓国、米国は揃って、250万人の日本の戦没者とともにA級戦犯14人の霊が合祀されている靖国神社に安倍首相が参拝することに反対する姿勢を明確にしてきた。しかし安倍氏は、2006~07年の第1次安倍政権の際に靖国神社に参拝しなかったことを後悔していると述べていた。

 安倍氏は多分に、失うものはほとんどないと感じ、今、諸外国の反応により靖国参拝の決断が正当化されたと判断しているのだろう。

安倍首相の読み

 中国、韓国両政府は予想通りの激しい反応を示した。中国のある報道官は、安倍氏は「侵略を美化している」と非難し、靖国神社で祈りを捧げられている戦犯を「アジアのナチス」と呼んだ。韓国は「遺憾の意と憤り」を表明した。靖国参拝は東南アジアも動揺させた。このような問題にはめったに口を挟まないシンガポールでさえ、安倍氏の靖国参拝に遺憾の意を表明した。

 米国もこの挑発に当惑し、怒りを覚えた。日本にとって最も親密な同盟国である米国の政府高官らは安倍氏に対し、靖国神社に参拝しないよう何度も訴えてきた。

 安倍氏としては、沖縄県の人口の少ない地域へ普天間基地を移設させる念願の計画に承認を取り付けるうえで進展があったという12月27日のニュースが米国の苛立ちを和らげることを期待したのかもしれない。しかし、2001~06年の小泉純一郎元首相による計6回の靖国訪問に無言を通した米国は、今回は「失望」を表明した。

 だが、米国の非難はそこそこ穏やかで、日本と「その近隣諸国」に関係改善に向けて努力するよう求めていた。さらに安倍氏は、韓国と中国の脅しはあまり威力がないと考えた可能性さえある。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は既に、安倍氏との会談を一切拒んでいた。韓国政府と日本との険悪な関係は、米国にとっては懸念材料だが、韓国の国民や企業にとってはそうではない。

 中国について言えば、中国政府は反日デモを促さなかったし、貿易制裁も科さなかった。実際、普段は超国家主義的な「環球時報」の社説は、安倍氏の挑発に抑制の利いた態度で応じ、「大規模な経済制裁」を避けるよう主張した。

 中国は安倍氏との首脳会談に一切応じないことにしたが、論争となっている尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡る緊張は、そもそも日中首脳会談などあり得なかったことを意味していた。