トヨタ自動車の東京本社。午後0時15分になると電灯が一斉に消える。ちょうどその時間に居合わせたので、自分の電波時計の腕時計を見ていたら、1秒の狂いもなかった。日本企業の節電対策は徹底している。
変化しない組織や人に成長はない
先週金曜日には長野県の下條村への取材のためにレンタカーの「プリウス」を走らせた。
東京に帰ってきて車を返したら、「お客さん、燃費が1リッター25キロ超えてますよ。なかなか良い走りをしてますね」と店員さんに言われ、ちょっとうれしい気持ちになった。
無理な加速はしない。下り坂ではじっくり発電させてエネルギーをできるだけ回収する走りをする。自然とエコな運転を心がけている自分がいたのも、久しぶりに長距離を運転して驚いた点だった。
長年トヨタの取材をしてきて、トヨタ生産システムにはかなり詳しくなったつもりでいる。トヨタ流にはいろいろ教えられることが多いが、最も印象に残っている言葉はこれだ。
「日本はさぁ、湿気が多いでしょう。雑巾を干して乾かしたつもりでも、うっかりそのままにしておくと湿っちゃうんだよ」
「乾いた雑巾を絞る」と言われたことがある世間の批判について、生産担当の副社長が思わずこぼした苦肉の反論だった。
言い訳じみて聞こえるかもしれない。でも、トヨタの強さはこの言葉に要約されているのではないだろうか。
これ以上効率的なシステムは考えられないというところまで完成度を高めたつもりでも、技術は進歩するし新しいアイデアも生まれる。改善に終わりはないということだ。そして変化のない組織や人に成長はない。
トヨタ用語では「改善後改善前」という。
街を見れば東京の地下鉄車内の電灯も最近はLEDが増えている。我が家でも白熱電球をLED電球に替えたら、60ワットの消費電力が6ワットになった。多少暗い気もするが、何せ消費電力は10分の1。
必要は発明の母。いまの日本の置かれた状況は何か新しい時代の幕開けを予感させる。電力不足が様々なところで革新を促しているのだ。
国会前では「原発再稼働反対」デモが盛り上がを見せている。これまでのどこか白けたムードが漂っていた日本とは明らかに変わってきている。
日本が燃え始めたような印象を受ける。次の国政選挙が楽しみである。