南シナ海で中国は今、強大な軍事力を背景に、傍若無人化しつつある。7月12日、カンボジアの首都プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)では、ヒラリー・クリントン米国務長官が領有権問題の平和的解決に向け、中国とASEAN諸国の間で法的拘束力を持たせた「行動規範」策定を強く求めた。

ASEAN外相会議初の「共同声明なし」

 軍事弱小国であるASEAN諸国がスクラムを組むことを良しとしない中国は周到な根回しで各個撃破を画策した。その結果、南シナ海の領有権問題を巡る共同声明の文案作業で決裂し、13日、ASEAN外相会議は史上初めて共同声明が発表できないという異常な形で終了した。

米中外相会談、経済・気候変動対策で協働を確認

北京で米国のヒラリー・クリントン国務長官を出迎える中国の楊潔篪外相(右、2009年撮影)〔AFPBB News

 中国は力の信奉者である。ASEAN諸国はスクラムを組むと力強いが、バラバラになると中国にとっては赤子の手を捻るようなものである。

 今回、中国の楊潔篪外相はスカボロー礁で譲らないフィリピンとは会談を拒否するなど、露骨な孤立化を謀った。孫子の「不戦屈敵」は既に始まっている。

 東シナ海も決して例外ではない。7月11日から12日にかけて、中国の漁業監視船3隻が尖閣諸島近海の日本領海を侵犯した。海上保安庁の退去要求に対し、「正当な公務執行であり、妨害するな。直ちに中国の領海から離れよ」と応答し、直ぐには退去しなかったという。

 漁業監視船は公船である。同時に3隻もの公船が領海侵犯するのは初めてである。中国の無頼化は明らかにエスカレーションしつつある。

いざというときに逃げ道を作る米国

 南シナ海は中国VS複数国だが、東シナ海は中国VS日本の1対1である。米国は尖閣諸島は日米安全保障条約5条対象であると述べた。だが、領有権については言及していない。

 米国はいざというときに逃げ道を作っているとも言われる。東シナ海問題は将来、日本が孤立無援で中国に対峙しなければならなくなることも覚悟しておかねばならない。

 漁業監視船が、中国海軍艦艇に代わり、そして、現在建造中の空母が随伴して現れるようなった場合、日本はどう対応するのか。「不戦屈敵」に土下座しなくていいよう、今から戦略を構築しておかねばならない。国の守りに「想定外」はないのだ。

 中国はウクライナから購入した空母ワリヤーグを約6年の歳月をかけて改修し、昨年8月初めて試験航行させた。