2012年12月19日に投開票される韓国の大統領選挙に向けて、与野党有力者の出馬宣言が相次いでいる。

 世論調査でトップを走るのはセヌリ党国会議員の朴槿恵(パク・クネ)氏(60)だが、これを激しく追うのはいまだ立候補を表明していない安哲秀(アン・チョルス)ソウル大教授(50)だ。

発売直後に初版が売り切れる人気ぶり

7月19日に発売された『安哲秀の考え』は初版があっという間に売り切れ、出版元のキムヨン社によると、1日に5万部ずつ印刷しても間に合わない人気だという

 同氏の最新の著作が7月19日に発売され、あっという間に初版が売り切れた。人気の秘密を探ろうと早速買って読んでみた(JBpressの2011年9月16日掲載記事「韓国政界の台風の目は『韓国のビル・ゲイツ』」参照)。

 本の題名は「安哲秀の考え」。副題には「われわれが望む韓国の未来地図」とある。

 全275ページだが、政治や政策に関心がない一般の国民に読んでもらうことを意識していて読みやすい。写真も多く、普通の韓国人ならすらすら読むことができるはずだ。

 著者は、安哲秀氏本人だが、新聞記者出身の女性大学教授との対談という形式になっている。

 内容は、安哲秀氏の生い立ちから始まり、2011年夏にソウル市長補欠選挙への出馬を検討して以来、「政界の台風の目」となってから何を考えていたか、さらに今の韓国が抱えるさまざまな課題に対する自分の考えという順序になっている。

 「大統領選挙出馬」に向けた政策本とも言え、韓国メディアは一斉に「事実上の出馬宣言」とか、「選挙運動本格化」などと報じている。

世論の反応次第で出馬を最終判断

 これに対して安哲秀氏は著書で「出馬宣言」をしているわけではない。「この本を契機に、自分の考えをより具体的に伝え、多くの人の意見に耳を傾ける」とだけ述べている。具体性に乏しいと言われた政策についても体系的に説明し、世論の反応を見て出馬するかどうかを最終的に決めるというのだ。

 安哲秀氏は、「出馬宣言」をしていないにもかかわらず、一貫して、朴槿恵氏と並ぶ高い支持率を得ている。