世界企業の株価総額で2年連続でトップになった米アップル。同社の勇躍は故スティーブ・ジョブズ氏が他界した後もとどまるところを知らないが、アップルがここまで業績を伸ばせた一因は、小売部門を牽引したロン・ジョンソン氏がいたおかげでもある。
アップルの成功を支えた小売りの鬼才
ジョブズ氏はIT業界の天才と言われたが、ジョンソン氏は小売りの鬼才と呼ばれもした。
と言うのも、世界中に展開する直営店のアップルストアはジョンソン氏が主導し、ジョブズ氏を説得して直営店を作らせて成功を収めたからだ。
アップルストアが採用する直営店方式は、新しい業態ではないが、ハードもソフトも作るコンピューターメーカーが製品の販売ルートを独自で確立し、店舗を出すという戦略には斬新性があった。それまでは小売りには小売りのプロがおり、家電量販店などがその役割を担っていた。
アップルが小売りに手を伸ばし始めたのは2001年である。ITバブルが弾け、その後の業界の姿が模索され始めている時だった。
ただ直営店をスタートさせはしたが、その軌跡はスピーディーなものではない。2年半後の2003年暮まで、全米にできた直営店は72店舗に過ぎなかった。
ジョブスの他界でアップルを去ることに
スターバックスはある時期、1営業日につき1店舗を開けるほどの勢いがあり、1年間で250店舗も開けていた。それには到底追いつけなかった。
アップルは2003年暮、東京銀座に国外としては最初の直営店をオープンさせた。その時、ジョブズ氏と共にジョンソン氏も来日している。記者会見で壇上に立ったジョンソン氏が言った。
「過去2年半で米直営店には2000万人が訪れました。そのうち97%の方が満足したと回答しています。年齢や性別、国籍を問わず、素晴らしい購買体験をしていただいています」
直営店の成功をそう誇示した。すべてのアップル製品を購入できるだけでなく、専門家のアドバイスを受け、購入前に無料で試し、ソフトのインストールもしてもらえる。さらに要望に応じたカスタマイズを施し、使い方を説明する段階まで世話をする。