住友ゴム工業 取締役 常務執行役員の村岡清繁氏(撮影:栗山主税)

 近年、タイヤの領域で新しい技術を次々と開発しているのが、「ダンロップ」や「ファルケン」といったタイヤブランドを展開する住友ゴム工業だ。同社は2024年10月、乾いた道路から雪道まで、あらゆる路面で走れるオールシーズンタイヤを発売した。この商品に使われているのが、同社の新技術「アクティブトレッド」である。それ以外にも、タイヤの摩耗状態や路面状況を検知する「センシングコア」の開発にも成功している。こうした新技術を生み出せる理由はどこにあるのか。技術部門を統括する住友ゴム工業 取締役 常務執行役員の村岡清繁氏に尋ねた。

「ダンロップ」というブランド名に内包された開発精神

 住友ゴム工業(以下、住友ゴム)の主力ブランドである「ダンロップ」。このブランド名は、ジョン・ボイド・ダンロップ(1840~1921年)という人物の名前に由来する。同氏は、世界で初めて空気入りタイヤを実用化したアイルランドの獣医師である。

ジョン・ボイド・ダンロップ

 この人物の功績を手本とするかのように、住友ゴムも「世界初」の技術の開発や、今までに類を見ない製品の実現に努めてきたという。他社に先駆けて開発する「先進性」、それこそが同社の技術における強みだと、村岡氏は口にする。

「技術開発に携わる人間は、どうしても他社と違うもの作ろうと考え、差別化を重視しやすい傾向にあります。しかし私たちは、差別化よりも、いち早く世の中に提供する先進性を大切にしてきました。いずれ他の企業が同じものを作っても構わないので、とにかく私たちが先に出していく。なぜなら、誰も追従しない差別化された技術よりも、他の企業が徐々に同じものを作り、多くの人々がその製品を使うことで世の中が変わっていく方が大切だと思うからです」

 これに加えて、同社が「タイヤメーカーの最大手ではない」ということも、先進性を徹底する理由にあったと村岡氏は考える。