ファンタジースプリングスに新設されたホテルでも、1泊30万円超という部屋が用意されるなど(アーリーエントリーなど様々な特典付き)、高単価商品が導入されています。

 高単価商品が好調に推移している背景には、来園者の年齢層の上昇も関係していると言えそうです。東京ディズニーランドは2023年に開業40周年を迎えており、ゲストの年齢も上がっています。そういう変化の中で、若い世代に比べて「テーマパークで過ごす時間の質」を求める大人を満足させるサービスを充実させた結果として、客単価が増加しているわけです。

 来園者の年齢層別構成比を見ると、40歳以上の来園者の割合が年々増加しています(下図)。年齢が高くなるほど平均的に所得が高いことを考慮すると、40代以上の来園者の割合が上がっていることは客単価を押し上げる要因になります。子供の頃から繰り返しTDRに来園してきた人たちは、自分の子供や孫と一緒に来園して、商品や飲食に多くのお金を使うという傾向があると思われます。

■ USJとの比較でわかるTDRの特徴②

 チケットの値上げについては、USJが先行して進め、TDRはそれを追いかける形で施策を打ってきました。

 USJでは、2006年からチケット代の値上げを続け、2019年1月からはチケット価格の変動制を導入しています。また、「ユニバーサル・エクスプレスパス」という有料のパスを購入することによって、待ち時間なくライドに乗車できるようにしました。

 両パークとも、チケット代が値上がりしても入園者数は減少していません。よく比較対象として、映画チケットや他国のディズニーランドのチケット価格が引き合いに出されますが、約2時間で約2000円の映画と比較すると、朝9時から夜21時まで12時間たっぷり遊べて約1万円のテーマパークは割安とも言えます。また、外国人観光客にとっては、昨今の円安の影響もあり、安く感じると考えられます。

 物販については、USJでは、期間限定のアトラクションに紐づく限定品(例えば鬼滅の刃グッズなど)や、アニメやゲームに出てくる食べ物、グッズの商品化などに力を入れています。

 その中でも面白い施策といえるのが、スーパー・ニンテンドー・ワールドで使用できるアトラクションと連動したグッズ「パワーアップバンド」の販売です。これにはデータが蓄積できて、再び来園したときには過去に集めたコインなどが反映された状態で楽しむことができます。そのため何度も来ようと思っているゲストは、高い確率で購入します。

 これに対してTDRの物販は、ディズニーキャラクター好きのための生活用品などを中心に開発されています。例えばミッキーマウス型に泡が出るハンドソープなどです。ファミリーで訪れ、子供が喜ぶグッズを買ってあげたい親心をくすぐるような商品です。ディズニーのキャラクターを最大限に活かした新製品を開発し、何度来園しても飽きない商品づくりに注力しています。

 また、TDRが他のテーマパークと異なる点として、宿泊需要に対応したホテルの運営は大きな強みと言えます。

<連載ラインアップ>
第1回 ユニ・チャームは「成熟期」を迎えながら、なぜ高PBRを維持できるのか?
第2回 不織布・吸収体に経営資源を集中、ユニ・チャームの高収益を支える「本業多角化、専業国際化」とは?
第3回 新興市場がユニ・チャームの成長を牽引、海外展開を成功に導く「勝ちパターン」とは?
第4回 年間入園者数が3000万人を突破、東京ディズニーリゾートはなぜ驚異的なリピート率を維持できるのか?
■第5回 「待ち時間を減らす」東京ディズニーリゾートの“客単価”を引き上げたオリエンタルランドの方針転換とは?(本稿)
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