ただし、その際に使っていた質問票は財務や法務観点の評価項目が中心だった。最近では、それらに加えて児童労働の禁止を徹底しているか、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいるかなど新たな項目が追加されるようになった。

 こうした動きは企業としてのマテリアリティ(重要課題)の実現に役立つ一方で、サプライヤー評価の実施をアピールすることが目的化している企業も見かける。

 重要度の低いサプライヤーも含めて全取引相手にアンケートを出し、集計し、評価スコアが何点だったとレポートをまとめることが調達部門の定型業務に加わっているのだ。時には、本社と事業部門が重複してサプライヤー情報を分析しているケースもある。

 サプライヤー情報を入手した後に、取るべきアクションが規定されていないこともある。スコアの低いサプライヤーにどのように働きかけて改善を求めていくのか、それをどのように監査するかという検討につなげていかなければならない。

 ところで、サステナビリティ関連項目のサプライヤー調査や分析を請け負うサービスや第三者機関も登場している。海外では利用することが一般化しつつあり、日本企業でも先進的企業が先導する形でここ数年間で少しずつ導入が始まっている。

 しかし、これまでは国内サプライヤーへの浸透度が必ずしも高くなかったこともあり、国内取引の比重が大きい企業では導入する真価を見出しきれず、わざわざ費用をかけて、プラットフォームを使う必要があるのか、と二の足を踏んでいた。

 実は、こうした状況はサステナビリティ対応全般に当てはまる。調達部門は対応を迫られているにもかかわらず、トリレンマを解く必要性を社内でうまく説明できなかったり、コストをかけてどこまで踏み込むべきか判断がつかなかったりして、結論が先延ばしとなってしまうのだ。

 サプライチェーン上で自社の企業ブランドに多大な影響を及ぼしかねない深刻な問題が生じた場合に、調達部門としてタイムリーに適切な情報を把握できず、対応が後手に回ってしまう。結果的に調達起因で自社のレピュテーションが毀損する状況は何としても避けなくてはならない。

<連載ラインアップ>
第1回 インテル、IBM、ファイザーほか製薬大手は、なぜサプライチェーンに大規模投資を行うのか?
第2回 最安値が正義ではない、調達部門が直面しやすい「トレードオフ」の3つのパターンとは?
第3回 アマゾンは、いかにして調達における「競争優位性」を築き上げたのか?
■第4回 調達業務が高度化する中、日本企業はなぜ専門人材の供給・育成に注力しないのか?(本稿)
■第5回 CPO(最高調達責任者)設置を基点とした、調達の「経営アジェンダ化」と「ガバナンス構築」のポイントとは?(11月22日公開)
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