テスラのオクトバルブ付TMSとは
その後、2020年にテスラがモデルYにオクトバルブ付TMS(サーマルマネジメントシステム)を搭載すると状況が一変する。テスラが狙ったのは、従来の空調システムに対して、EVの機能部品であるバッテリー、モーター、インバーターなどからの排熱利用や、極低温時は凍っているため作動しにくいバッテリーに初期加温するなど、EV特有の環境に配慮した革新的な空調システムを提供することであった。
その実現のため、オクト(ラテン語で8を表す)バルブと呼ばれるユニークな部品を開発した。当該部品は、内部に2つの回転弁を内蔵し、コンピューターにより流量を8方向に差配できるシステムを有している。さらに、テスラは2012年のモデルSから採用しているソフトウエアを無線で更新する技術であるOTA(Over The Air)を適用し、オクトバルブ付TMSもアップデートも可能となっている点である。
このような革新的技術は、どこかのサプライヤーから提案があったのかと想像したが、オクトバルブの原型ともいえる基本パテントは、テスラが2016年11月に出願している。さらに、モデルYにて採用された詳細パテントも2018年9月に出願している。つまり、必要な基本技術は自社開発したことが分かる。テスラは、当該システムをモデルYから採用したが、その後モデル3にもマイナーチェンジの際に搭載している。
