新機種のiPhoneを発表するアップルのティム・クックCEO(2025年9月10日、米カリフォルニア州)
写真提供:ゲッティ=共同

 アップルは2025年9月期までの直近4年間で売上高4000億ドル前後、純利益1000億ドル前後にとどまり、成長の停滞が鮮明になっている。生成AI対応の遅れやiPhone依存が強まる中で、独自開発という戦略が足かせとなっている構図も浮かぶ。革新性を取り戻すことはできるのか?

アップルは“偉大なる企業”から“優良企業”に

 今ほどアップルの真価が問われている時はない。2022年度から2025年度に至る直近4年間の売上高は4000億ドル前後で推移し、純利益も1000億ドル前後で伸びがない。この推移には、単なる数値以上の意味が隠されている。それは、アップルが沈みゆく帝国であることを浮かび上がらせているということだ。

『徒然草』の155段に、「夏果てて、秋の来るにはあらず」との一説がある。季節は、春が終わってから夏になり、夏が来てから秋になるのではない。春はそのまますぐに夏の気配を誘い、夏の頃からもう秋はやってきている。つまり、夏のうちに、すでに秋の気配はつくり出されているというわけである。

 この一説は、まさに今のアップルを表しているかのように見える。2010年にiPadを発売して以来、その「革新性」は影を潜め、もはやアップルは“偉大なる企業”から、新たに画期的な製品やサービスを作り出せない単なる“優良企業”に成り下がってしまった。