ソニー創業者・井深 大写真提供:共同通信社
2025年、ソニーグループはエンタメ3事業(ゲーム、音楽、映画)が堅調に推移し、収益の柱として存在感を高めている。中でも音楽事業の成長は、1979年に発売された初代ウォークマンに始まる“イノベーション企業”としての源流を想起させる。その開発の起点には、当時の常識を疑い、固定観念を手放す大胆な判断があった。
『戦略書としての老子』(原田勉著/東洋経済新報社)から一部を抜粋・再編集。老子が説いた「虚心」の思想をヒントに、ソニー創業者・井深大の発想に通じる“固定観念の外し方”を探る。
思い込みから自由な人材を尊重する
『戦略書としての老子』(東洋経済新報社)
心を虚にするとは、心を無にすることであり、その状態を「静」といい、変わらない道に帰ることを「復命」という。そして、この道の特性を知ることが智慧であり、この智慧を「明」と呼ぶ。
この明を知らなければ軽挙妄動することになる。換言すると、振り子運動の軌跡を理解せず、猪突猛進すれば、終点に到ったときの反転に対応できなくなる。武田信玄のように「七分勝ち」に徹することなく、「驕る平家」となってしまう。
したがって、道のあり方、すなわち、静かなるプロセスやその振り子運動を理解し、それを活用する智慧が「明」になる。
この教えの内容は、老子の「復帰の思想」と呼ばれるものを反映しており、万物はすべて無に復帰することを述べている。
この万物には当然ながら心も含まれており、心を無に帰すこと、これが「虚心」にほかならない。心を無の場所にあらしめること、すなわち虚心に到らなければ、具体的状況における無の働き、勢いを洞察することは難しくなる。
虚心とは別の表現をすれば、「先入観、思い込みを排除すること」を意味する。しかし、自らがもつ先入観や思い込みに気づくことは難しい。
ソニーの共同創業者、井深大が、ソニーで伝説の技術者と呼ばれた大曽根幸三のところへ現れ、次のように問いかけた。






