「同じ製品をたくさん作る方が収益性は高まる」は本当か?

 製造業では、「同じ品目を作るならたくさん作った方が、単価が下がって収益性が高まる」という考え方に陥りがちです。しかし現実には、欠品を恐れて需要の少ない品目も作ってしまい、余分な仕事を増やしていたばかりか、キャパシティの無駄使いにつながり、むしろ収益性を圧迫してしまいます。

 MTAやDBMの考え方は、このように説明すると当たり前に見えるかもしれませんが、多くの製造業にはまだなじみのないものだと思います。コンビニエンスストアの受発注・在庫管理の発想に近いものですが、メーカーの主導が実践できている例は現在もそれほど多くありません。

 それだけに、導入するには全社的な理解を得ることが不可欠。前回お話ししたように、経営幹部を巻き込んでTOCに対する理解を深め、課題意識を共有し、TOCのどの解決手法が有効なのかを一緒に考えていくことが大切です。MTAやDBMについても、こうしたプロセスを経て取り組んでいくことが成功の秘訣だと思います。

 次回は、開発体制の刷新を実現した「CCPM(Critical Chain Project Management)」について、お話ししたいと思います。

<連載ラインアップ>
■第1回 元オムロンCFO日戸興史氏が解説、世界的ベストセラー『ザ・ゴール』のTOCがなぜ経営改革に効いたのか
■第2回 元オムロンCFO日戸興史氏が語る、TOC(制約理論)でリードタイムを5分の1に短縮できた理由
■第3回 過剰在庫の真因は需要予測の精度にあらず、元オムロンCFO日戸興史氏が解説するサプライチェーン改革の重要メソッド(本稿)
第4回 「開発期間」と「品質」をどう両立させる? 元オムロンCFO日戸興史氏が解説する全体最適のマネジメント手法「CCPM」


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