予測に注力しても、過剰在庫の抜本解決にはつながらない

 当たり前に見えますが、多くのメーカーはそれに対応できていないのが実情です。かつてのオムロンヘルスケアにおける家庭用血圧計の生産の仕組みもそうでした。

 当時は、営業部門が国内外の需要をできるだけ丁寧に予測し、生産部門がそれを達成する生産計画を立てて、真摯に実行していました。それが必要なものを必要な時に必要なだけ供給する、最善の方法だと考えていたからです。

 この場合、在庫を適正に保つには、需要予測の精度を高めることが重要になります。しかし実際には、在庫過剰がどうしても解消できず、苦心していました。これは営業部門と生産部門の摩擦の原因にもなっていました。

 われわれのやり方の問題に気付いたのは、TOCに出合ってからでした。つまり「予測は当たる」「予測の精度を高めることが大切」という前提が間違っていたのです。

 もちろん過去の販売データや景気動向、人口動態などを基に分析すれば、マクロの需要はある程度なら予測できるでしょう。しかし、リードタイムが約3カ月もあったので、その間に需要も当然変化してしまいます。また営業部門としては「欠品は絶対に避けたい」という心理が働くので、どうしても需要を多めに予測しがちでした。

 しかもわれわれにとって大切なのは、前述のように「お客さまが店頭で欲しい商品が買えなかった」という事態を防ぐこと。つまりマクロの需要ではなく、個店レベルに近い需要の予測が必要ですが、これはほぼ不可能です。ですから「予測は当たらない」という前提に立ち、まったく新しい生産・供給体制を構築する必要がありました。