写真提供:©Budrul Chukrut/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
「法務部門は変化しなければならない」。法務部門で働いていて、こうした掛け声を聞いたことがない人はもはや少ないだろう。ただ実態を見ると、具体的な対策が進んでいる企業は多くはないようだ。この課題に立ち向かうパナソニックホールディングスコーポレート法務部の根橋弘之氏がJapan Innovation Review主催の講演に登壇した。根橋氏は、外部の弁護士事務所からパナソニックに移り、業務の中でリーガルテックや生成AIの活用に関心を持ち、現在はリーガルオペレーションズ担当として同社の法務部門の組織改革を担っている。法務部門はどう変化していくべきなのか。根橋氏のオリジナルの提案を含む講演の内容を要約して紹介する。
既存の業務フローの調整とは異次元の変革が必要
講演の中で根橋氏は、「法務部門は変化しなければならない」というメッセージを「5W1H」に当てはめて整理していった。まずは前提となる、なぜ(Why)の部分だ。
社外環境を見ると、法務部門の業務の範囲は確実に広がっており、難易度も上がっている。個人情報保護をはじめとする各国の規制強化、米国と中国のデカップリング(分断)や地政学リスクの顕在化に伴う経済制裁や輸出規制など、リーガルマターは増える一方だ。しかもテーマはグローバルかつ未曾有の課題だらけで、かつてない複雑さとなっている。
しかし多くの企業では、その業務を担う人材が十分ではない。新卒か中途かを問わず、法務人材の採用は難しく、現場は常に逼迫した状態に置かれている。
そんな中に、生成AIが登場してきた。法務の業務は、情報処理・言語処理との親和性が高い。すでに世間では「AIが法務部門の仕事を奪う」という論調もある。根橋氏も「現場からすると、足元の逼迫感とのギャップがあり過ぎてイメージしにくいですが、私も遠からずそんな未来がやってくると見ています」と指摘する。
社内環境も変化している。「現代はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代であり、イノベーションを起こさなければならない」などといわれる中で、事業戦略が短期間で見直されるケースが増えてきた。戦略の見直しがあればリーガルリスクも変わり、法務が提供すべき付加価値も変わっていく。
今起こっているこうした変化は、既存の業務フローの調整で済むレベルではなく、従来のスキルセットでは対応し切れない事態になりつつある。実態を踏まえ、根橋氏は「法務部門には『変化』ではなく『変革』が必要なのではないか」と考えているという。







