bluestork / Shutterstock.com

 1990年代、「パートナーにしたくない」と敬遠されたマイクロソフト。競争相手に激しく対抗し、数多くのパートナーを怒らせてきた同社が、なぜ、ライバルであるデルやグーグルと協力できるようになったのか。マイクロソフト復活の立役者となったサティア・ナデラCEOの思いと手腕を凝縮した『Hit Refresh(ヒット・リフレッシュ) 』(サティア・ナデラ/グレッグ・ショー/ジル・トレイシー・ニコルズ著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集。

 競争しながらも協力する、「フレンド」(仲間)でも「フレネミー」(仲間に見せかけた敵)でもない、新しいパートナーシップの形とは。

フレンドか、フレネミーか?
必要になる前にパートナーシップを築く

Hit Refresh(ヒット リフレッシュ)』(日経BP 日本経済新聞出版)

 確かに、連携には課題もある。長らく協力関係にある企業との間でさえそうだ。時には、古くからの関係を見直すことも必要になる。たとえば、デルとの関係を見てみよう。デルは古くからマイクロソフトと協力関係にあり、ウィンドウズ・パソコンを何億台と出荷してきた。

 ところが2012年、マイクロソフトが初めて独自のハードウェア製品、サーフェス・シリーズの設計・生産を決定すると、マイクロソフトとデルの関係は単なるパートナーとは言えなくなった。ある面ではパートナーだが、別の面では直接のライバルとなったからだ。

 その後、両社の関係はさらにあいまいなものになった。デルが、マイクロソフトが注力してきたクラウド事業に狙いを定め、クラウド・テクノロジーの主要メーカーであるEMCを買収した。それは、いまだに類例のないほど高額なテクノロジー企業買収となった。しかし、こうした事態を経てもなお、デルとマイクロソフトは、相互に利益のある分野で提携を続けている。

 デルは自社のノートパソコンにウィンドウズを搭載し、グローバルな流通オペレーションを通じてマイクロソフトのサーフェスを販売している。最近では、サーフェスの人気ぶりを見て、タブレットとしてもノートパソコンとしても使える自社製品の開発を始めた。こうした動きは、HPなど、ほかの企業にも見られる。