三井化学 執行役員 総務・法務部長の前田光俊氏(撮影:冨田望)三井化学 執行役員 総務・法務部長の前田光俊氏(撮影:冨田望)

 再生プラスチックの製造効率化や他社との協業など、事業領域の広がりを加速させる三井化学。こうした動きに伴い、社内では新たな意思決定やリスク判断の重要性も増している。同社では法務部門がM&A(合併・買収)など社内の重要な意思決定に積極的に関与し、経営のサポート役としての機能を高めている。また事業部門も、法務に対して意見を求め、活発な議論が行われているという。その企業文化の背景や、法務担当者に求められる条件などを、法務部門の責任者である前田光俊氏に聞いた。

企業法務として、誰にでも分かる言葉で語る

──三井化学の経営体制の中で、法務部門は大きな役割を果たしているそうですね。どのような形で経営に関与しているのですか。

前田光俊氏(以下、敬称略) 例えば、当社では新規の大型投資に際して「投融資検討会」を設置しますが、法務部門は必ず参加して、リスクを指摘することになっています。私もその会議には必ず出席して、法務リスクが正しく手当てされているかを確認します。

 こうした公式の会議以外にも、日々の事業部門などとの打ち合わせで、法務としてどう思うかを問われます。当社にはチーフリーガルオフィサー(CLO)という役職は存在しませんが、私が法務部門の責任者として、経営の意思決定に法務の視点で意見を述べる役割を担っています。

 当社は伝統的に、重要案件については必ず法務の意見を聞いて進めようとする企業文化があります。その分、法務部門にとってはプレッシャーもありますが、責任ある対応ができるように日々組織としての能力を高めています。

──三井化学の法務部門の活動が、組織の意思決定に組み込まれているのはなぜですか。

前田 何か決定的な事件があったからではありません。私が思うに、法務部門が当社の長い歴史の中で果たしてきた役割が、信頼につながっているのだと思います。