写真提供:ロイター/共同通信イメージズ
スターバックスコーヒーの創業者で元CEOのハワード・シュルツ氏

 従来とは大きく異なる競争環境で組織が生き残るためには、周囲の変化のスピードを上回る速さで自ら変革を成し遂げられる「自走式」になる必要がある。そして、この自走式組織へと変化を促すために求められているのが、「共感型リーダー」だ。本連載では、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏による『共感型リーダー まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法』(岩田松雄著/KADOKAWA)から、内容の一部を抜粋・再編集し、組織を自走させるためのリーダーシップについて紹介する。

 第5回は、リーダーシップスタイルの一つとして最近注目をされている「自分らしいリーダーシップ」(オーセンティックリーダーシップ)について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 血の気が多かった徳川家康が、なぜ260年もの太平の世を築けたのか?
第2回 危機的状況でも部下に厳しく言えない…上司が選択すべき最適解とは?
第3回 孫正義の傍らには宮内謙…なぜ成功する経営者には「相棒」がいるのか?
第4回 なぜ「人の良いおっちゃん」は、管理職として不合格なのか?
■第5回 リーダーは前に出る? 一歩下がる? 元スターバックスコーヒージャパンCEOが悩んだ末に出した答えとは?(本稿)
第6回 京セラ創業時に、若手に突き上げられた稲盛和夫が悟った「経営の意義」とは?
第7回 元スターバックスコーヒージャパンCEOも実践する自己認識「ジョハリの窓」とは?

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■ 自分らしいリーダーシップ(オーセンティック・リーダーシップ)

 最近注目されているのがオーセンティック・リーダーシップです。誰かの真似ではなく、自分自身の価値観や信念に根ざしたリーダーシップです。そのためには自己認識(セルフ・アウェアネス)がとても重要となります(第9章「岩田流ジョハリの窓(自己意識)」を参照)。私は「自分らしさ」を大切にしながら、いろいろなリーダーシップを使い分ければ良いと思っています。そういう態度が人々からの共感を得られるのです。

 私がスターバックスの社長になって数ヶ月ぐらいして、日本の創業者の角田雄二さんに呼ばれて、

「岩田さん、一歩下がって他の役員の意見もよく聞いてあげてください」

 と注意を受けました。私自身そんなに強いリーダーシップを発揮していたとは思っていませんでしたが、他の役員からはそう見えていたのでしょう。

 その2週間後、シアトルの本社にビジネスプランの説明に行った時、創業者のハワード・シュルツに呼ばれて、

「マツオ、一歩前に出てみんなを引っ張ってくれ」

 と言われました。多分アメリカから日本に来ている役員が、ハワードにそう言ったのでしょう。私は困惑してしまいました。雄二さんはいつもニコニコして腰が低く、皆を手の上でうまく回していくようなリーダーでした。ハワードはとてもカリスマ性の強いトップダウンのリーダーです。それまで自分の中では、新米社長でのいろいろな遠慮もあり、手探りの状態でもありました。私はその時に、自分は雄二さんにもハワードにもなれない。自分らしいやり方でやって行こうと腹を括りました。そこからワンモアコーヒーなどの施策がヒットし、V字回復していくことになりました。

 まさしくこれは今流行しつつある「オーセンティック・リーダーシップ」を目指すということです。人真似ではない自分らしいリーダーシップを発揮すれば良いのです。ですから、ある時は「自分らしいシチュエーショナル(条件適合)・リーダーシップ」を、別の時には「自分らしいサーバント・リーダーシップ」を発揮すれば良いのです。