写真提供:共同通信社

 従来とは大きく異なる競争環境で組織が生き残るためには、周囲の変化のスピードを上回る速さで自ら変革を成し遂げられる「自走式」になる必要がある。そして、この自走式組織へと変化を促すために求められているのが、「共感型リーダー」だ。本連載では、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏による『共感型リーダー まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法』(岩田松雄著/KADOKAWA)から、内容の一部を抜粋・再編集し、組織を自走させるためのリーダーシップについて紹介する。

 第3回は、リーダーシップスタイルの一つである「トランスフォーメショナルリーダーシップ」と「パートナーシップリーダーシップ」について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 血の気が多かった徳川家康が、なぜ260年もの太平の世を築けたのか?
第2回 危機的状況でも部下に厳しく言えない…上司が選択すべき最適解とは?
■第3回 孫正義の傍らには宮内謙…なぜ成功する経営者には「相棒」がいるのか?(本稿)
■第4回 なぜ「人の良いおっちゃん」は、管理職として不合格なのか?(7月2日公開)
■第5回 リーダーは前に出る? 一歩下がる? 元スターバックスコーヒージャパンCEOが悩んだ末に出した答えとは?(7月9日公開)
■第6回 京セラ創業時に、若手に突き上げられた稲盛和夫が悟った「経営の意義」とは?(7月16日公開)
■第7回 元スターバックスコーヒージャパンCEOも実践する自己認識「ジョハリの窓」とは?(7月23日公開)

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共感型リーダーは 自走式の組織を目指す

■新しいリーダー像

 ビジョンを掲げて啓蒙するトランスフォーメーショナルリーダーシップとメンバーひとり一人が自動的にリーダーのように振る舞うシェアードリーダーシップが重要と言う研究結果が多く得られている。(入山章栄『世界基準の経営理論』)

 パス=ゴール理論で、状況に応じてどのようなリーダーシップのスタイルが必要か実際に色々調査すると、4つどころか多くのスタイルが出てきたのでした。あるリーダーシップスタイルが有効なのは、ごく限られた条件であるという研究結果が出て、条件適合理論の限界だと指摘されました。しかしながら経営学者が厳密な社会科学の観点から言っているのであって、私はリーダーシップには、どんな状況でも適用できる唯一普遍的なスタイルはないのだという結論はとても示唆に富んでいると思います。つまり経営は唯一の正解があるサイエンスではなくて、色々な答えが考えられるアートなのです。

 早稲田大学の入山章栄教授が書かれた『世界標準の経営理論』では、最近のリーダーシップ理論がいくつか紹介されています。

1. トランザクティブ・リーダーシップ(TL)

 トランザクティブ・リーダーシップとは部下の意思を尊重し、部下が成功すればきちんとそれに報い、失敗すればそれに対処するという、まさに取引(=トランザクティブ)のように部下を使いこなすリーダーシップです。「アメとムチ」をうまく使い分けるタイプ。

 私個人はこのようなリーダーや組織のもとであまり働きたいとは思いません。典型的な外資系の金融、特にディーラーと呼ばれる人たちが多い組織では有効でしょう。彼らは実績が出れば超多額のボーナス(アメ)が支給されますが、実績が出なければ簡単にクビを切られます(ムチ)。彼らには会社への帰属意識はなく、お金を稼げば、さっさと辞めていきます。