画像出典:『マンガでやさしくわかる知識創造』

 AIの普及により、多くの人間の仕事が取って代わられることが懸念され、近年は「ChatGPT」の登場で生成AIが脚光を浴びている。しかし、AIには「新しい知識(ナレッジ)を創り出すこと=知識創造」はできない。これができるのは人間だけだ。生身の身体を持ち、五感を使って経験から意識的に学べるからこそ、人間には知識創造が可能であり、生成AI隆盛の時代だからこそ、知識創造はビジネスパーソンの重要なスキルとなる。本連載では、『マンガでやさしくわかる知識創造』(西原〈廣瀬〉文乃著/藤沢涼生作画/日本能率協会マネジメントセンター)から内容の一部を抜粋・再編集。誰もがすぐに実践できる知識創造の考え方についてマンガを交えながら紹介する。

 第7回は、知識創造理論の中心となるSECIモデルについて深掘りする。

<連載ラインアップ>
第1回 社内の課題を一発解決、若手経理部員がつくった“図書館”の役目とは?
第2回 なぜ、多くの人が「自分は知識を創っていない」と思い込んでしまうのか?
第3回 組織の中で知識を創り、共有することで生まれる3つの効果とは?
第4回 なぜ、あの居酒屋チェーンの「つくね」は、どの店で食べてもおいしいのか?
第5回 「ジャパンアズナンバーワン」 と賞された日本企業の強さの秘密は何だったのか
第6回 なぜ、業務を「見える化」してKPIで測ると、人は違和感を覚えるのか?
■第7回 創造と蓄積をどう繰り返す? 知識創造理論の中心「SECIモデル」とは?(本稿)


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SECIモデル

マンガでやさしくわかる知識創造』(日本能率協会マネジメントセンター )

■SECIモデルの4つのフェーズ

 知識創造理論の中心となるモデルがSECI(セキ)モデルです。ムラサメ君がつくね職人のたとえでわかりやすく説明してくれていました。また、SECIモデルも紙ナプキンに描いてくれていましたね。

 ですので、ここでは野中先生と竹内先生が2020年に出版された『ワイズカンパニー』(日本語版は黒輪篤嗣(くろわあつし)訳、東洋経済新報社)に示された、より精緻化されたSECIモデルを紹介したいと思います。

 SECIモデルには、知識のタイプの変化と知識を創造する関係性の変化の2つがあります。整理すると下の図のようになります。

 これをモデルで表すと下の図のようになります。知識のタイプの変化を外側の矢印で、知識を創造する関係性の変化を4つのフェーズに描かれた円で示しています。

出所:野中・竹内(2020)『ワイズカンパニー』図3-4をもとに筆者改版
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 ここで1つ補足したいのは、すべてのフェーズに破線の円で環境(E)が示されている点です。前述したように、知識は人と人だけでなく、人と環境との相互作用で創られることを示しています。