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 各社がこぞって「ジョブ型」雇用制度導入へと舵を切るなか、「ジョブ型は日本企業には向いていない」と喝破する専門家がいる。その同志社大学・太田肇教授が、ジョブ型の問題点を指摘しつつ、具体的な事例やデータにもとづき、生産性向上や人材不足対策の切り札になる新たな働き方のモデルを提示。本連載では『「自営型」で働く時代――ジョブ型雇用はもう古い!』(太田肇著/プレジデント社)から内容の一部を抜粋する。

 第2回は、「自営型」の働き方の分類と世界への広がりの現状、日本での発展・普及の可能性やそのための条件について言及する。

<連載ラインアップ>
第1回 「侍ジャパン」はメンバーシップ型でもジョブ型でもなく、何型だったか?
■第2回 “ジャパンアズナンバーワン”再来? 「自営型」が日本になじみやすい理由(本稿)
第3回 ウェブ調査で判明、中小企業経営者の「自営型」導入への期待とその役割とは?
第4回 建設業や営業職で実証、なぜ「一気通貫制」で生産性が上がるのか?
第5回 キヤノン、オリンパスの生産性を上げた「一人生産」方式は、どう進化したか?
第6回 欧米企業幹部の働き方は、なぜ「ジョブ型」でなく「自営型」に近いといえるか

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 自営型の働き方には、企業等に雇用される「自営型社員」(下図PのⒶ)から、企業と業務委託契約などを結んで働く「インディペンデントコントラクター」と呼ばれる人(同Ⓑ)、制度的にも実質的にも完全に独立して働く人(同Ⓒ)までグラデーションがある。

 ただ本稿では統計数値として扱う場合以外、何らかの形で組織と関わりながら働く前二者(ⒶとⒷ)に焦点を当てて論じることにする。

 私はここ20年来、国内各地、それに海外20か国以上の国・地域を訪ね人々の働き方を調査してきた。そこでわかったのは、アメリカのシリコンバレーのような時代の先端を行く地域から、イタリア、台湾、中国などの伝統的な国・地域の職場にまで、自営型が広がってきていることだ。

 そしてわが国でも情報・ソフト系の企業から、製造業、建設業、サービス業、流通業まで多様な業種の現場に、自営型が浸透しつつある実態が明らかになった。しかもIT(情報技術。「ICT」〈情報通信技術〉とも呼ばれるが、本書ではITに統一する)化とグローバル化、そして新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)の影響を受け、自営型の普及がいちだんと加速している。なかにはそれをジョブ型の広がりととらえる向きもあるが、実態は明らかに自営型なのだ。

 注目すべき点が二つある。

 一つは、それが新たな経営環境にマッチしているだけでなく、人間にとって理想に近い働き方だということである。たとえば近年明らかになったように、日本人の仕事に対するエンゲージメント(熱意、献身、没頭)は世界最低水準にとどまるが、フリーランスだけを見ると欧米に遜色ないほど高い。