三井化学 グローバル人材部 部長の小野真吾氏(撮影:今祥雄)

 三井グループの総合化学メーカー、三井化学では、「事業を最も理解しているのは事業本部」との考えから、全社経営計画を踏まえながら、事業本部が立てる事業戦略や人員計画を基にして人材戦略を策定する。人材戦略の策定にあたって、事業本部の方針や計画をどのような形で取り入れるのか。事業本部の人員計画や人事課題を全社的な人材戦略に結び付ける仕組みを作ったグローバル人材部の小野真吾部長に話を聞いた。

事業に精通する事業本部の考えを人材戦略に生かす

──三井化学では、全社経営計画を踏まえた各事業本部の考えに基づき、人材戦略を策定しています。事業本部の方針や計画をどのように人材戦略に取り入れているのでしょうか。

小野 真吾/三井化学 グローバル人材部 部長

2000年三井化学に入社。海外営業、マーケティング、プロダクトマネージャー等を経験後、2008年より人事としてのキャリアを開始する。人事制度企画、採用責任者、M&A、ジョイントベンチャー設立、新事業立ち上げ、組織開発等多くの案件に携わる。2021年より現職。

小野真吾氏(以下敬省略) 三井化学の事業の主体は「ライフ&ヘルスケア・ソリューション」「モビリティソリューション」「ICTソリューション」「ベーシック&グリーン・マテリアルズ」という4つの事業本部にあります。それぞれの事業を統括する事業本部が自分たちの事業を最も理解しているとの考えから、三井化学の人材戦略も、この4つの事業本部が出す事業戦略を踏まえながら、全社的視点も組み込み統合したものになっています。現在取り組んでいる長期経営計画「VISION 2030」の基本戦略の一つである「事業ポートフォリオ変革の追求」でも全社で掲げた方向性に向けて、事業本部や各事業部が主体となって取り組んでいます。

──「人の三井」とも呼ばれるように、三井グループは人を大切にする社風があると言われています。三井化学も人的資本経営に力を入れていますが、人材戦略はやはり事業本部が主体となって決めているのでしょうか。

小野 人材戦略は全社のマクロ的な視点を踏まえつつも、各事業本部の成長戦略を実現する上で必要な人材・組織課題について、各事業本部主体で考え、推進しています。人材戦略を策定する際の基本となるのが、事業戦略を実現するために必要とされる組織形態やポジション、人材、スキルなどをまとめた「人員予測」です。事業戦略で計画しているプロジェクトを実現するにはどの地域にどのような組織が必要で、そのためにはどのような人材が何人必要かを事業本部が導き出し、人事部門と話し合って可視化しています。

 新規事業では正確な人員予測を出すのは難しいですが、例えば「グループ長には〇〇のスキルが必要」など、今後どういった人員やポジションが必要なのかというイメージをできるだけ言語化します。プロジェクトの概要や必要な人材像を明確にするために、人事部門が事業部のプロジェクトに直接関与することもあります。