経済産業省が経済政策のひとつに掲げる「人的資本経営」。この人的資本経営を成功させるために、富士通 執行役員EVP CHROの平松浩樹氏は「キャリアオーナーシップ」が必要であると説く。企業、経営者にとって、キャリアオーナーシップと人的資本経営はどうあるべきか。富士通と富士通ラーニングメディア共催のセミナー「第10回 Fujitsu 人材育成セミナー」にて、大手HR系メディア「日本の人事部」による「HRアワード2023 」で企業人事部門 最優秀個人賞を受賞し、多くの企業の人事担当者から注目されている平松氏が、キャリアオーナーシップと人的資本経営について、社内での実例も含め語った。
経営視点での人的資本経営
人材を『資本』として捉えて、その価値を最大限に引き出す人的資本経営は、今、経営者にとっての重要なテーマとなっている。この人的資本経営を実現するに当たって、富士通では「社員個々のキャリアオーナーシップを高めていく取り組みが伴わなければ本当の意味で会社は成長しない、という意識を持って取り組んでいます」と平松氏は言う。つまり、個々の社員が自分のキャリア形成について、組織任せではなく主体的に考えていく必要があるということだ。
平松氏は、富士通が2020年に策定した「パーパス(存在意義) 」と、2019年の「IT企業からDX企業に変わる」宣言を挙げた。「変わるためには、ビジネスモデルや社員のスキルなど、いろいろな面で大きく変わらなければいけない。そのために、人事と経営層が組んで、3年間にわたり多くの改革に取り組んできました」と平松氏は語る。
社会的価値を持つ会社へ変わるための人事施策
改革のひとつが「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」。パーパスを実現するために設定された新たな事業ブランドで、「富士通は長らく、個々のお客さまに向けたビジネスを提供していました。これからは社会課題を起点として‟クロスインダストリー“でお客さまとともに社会課題を解決する、という、富士通が社会的価値のある会社になっていくことを目指しています」と平松氏は話した。
平松氏はスライドで、2023年5月に発表された中期経営計画を掲げ、2030年に向けた価値創造の考え方として「人的資本のインプット、事業活動の重点戦略として人材に関するリソース戦略を実行、世の中全体のウェルビーイングの向上、ということが書かれています」と説明し、「富士通にとっての人材、もしくはわれわれ人事部門の役割がますます重要になってきました」と語る。
人的資本経営とデータドリブン経営
富士通が成長する上で、経営基盤を強化するために掲げる要素が「人的資本経営」と「データドリブン経営」だ。「富士通にとって、顧客に価値を提供する上で最大の資産は人的資本、つまり人材です。人的資本経営についても、われわれ人事が経営と一体になって取り組んでいくことになります。データドリブン経営についても、CRMや人事システムなど、グローバルな共通システムを導入し、さらにレベルアップしていくことにチャレンジしたいと思っています」と平松氏は語る。
富士通はスポンサーとしてスポーツチームを応援している。各競技で活躍するスポーツ選手を見ていて、平松氏はあることに気づかされたという。
「優勝するためのチーム戦略戦術を大切にしながら、一方で個として強くなる、というところです。チームプレーの中で当たり前にやっていることがわれわれにも当たり前にできるのではないか、と考えたのです」