圧倒的な成果を上げるために、本当に注力すべき重要指標(KPI)とは何か?本連載は、ロングセラーのマーケティング入門書『ドリルを売るには穴を売れ』の著者が、“顧客に刺さる”マーケティング戦略のつくり方と追うべきKPIについて徹底的に掘り下げた『顧客の「買いたい」をつくる KPIマーケティング』(佐藤義典著/朝日新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第1回は、顧客に「買いたい」と思ってもらうための、独自の「価値づくり」について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 「ドリルを売るには穴を売れ」マーケティングの大家・レビットの真意とは?(本稿)
■第2回 ハーゲンダッツを売るには、何を「強み」として、どう伝えればよいか?
■第3回 10年間で販売個数が約6倍、「ウタマロ石けん」の独自のマーケテイング戦略
■第4回 製品の「強み」を顧客に伝え切る、ウタマロ石けんの戦略の「急所」とは?
■第5回 「売上を増やせ!」と叫ばなくても、必然的に売上がアップする方法とは?
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1 「強み」が作る「あなたから買いたい」:「強み」と2つの行動量指標
■売上は「買いたい」の結果:「買いたい作りは価値作り」
まずは、お客様の「買いたい」を作れば、その結果として売上が上がる、ということを見てまいります。
自社の商品・サービスが「売れる」のは、お客様が「買う」と決めた「結果」ですから、「売上」ではなく、お客様の「買いたい」を、そしてそれを数値化した「指標」を追えばいいのです。それが「追うべき指標」でありKPIとなります。
その端的な例を1つ紹介します。ある居酒屋の話ですが、お客様に「ありがとう」などのお礼の言葉をかけられる回数が多い店は、売上目標達成率が高いということがわかりました。つまりお客様の「ありがとう」という言葉を増やすべく努力すれば、売上が上がる、ということです。「ありがとう」とお客様におっしゃっていただけるような料理を作り、接客をすれば、お客様に「買いたい」(この場合は「また来たい」)と思っていただけるわけですから、その「結果」として売上が上がるんです。
では、どうすればお客様の「買いたい」を作れるのか、となりますよね。お客様が商品・サービスなどを「買いたい」と思うのは、その商品・サービスがお客様に「うれしさ」「価値」をもたらすからです。
お客様がその商品・サービスに「価値」を認めるから「買いたい」と思うのです。 その「価値」や「うれしさ」、すなわちお客様が「買いたい」と思う理由を「ベネフィット」と呼びます。
このことを整理すると、以下のようになります。
- 「 買いたい」=お客様がその商品・サービスに「価値」(=ベネフィット)を認める
有名なのが、「ドリルを売るには穴を売れ」という命題です。マーケティングの大家、セオドア・レビット氏がその書中で紹介した考え方です。
お客様が「ドリル」を「買いたい」ときというのは、「穴をあけたいとき」です。お客様が買いたいものは、「ドリル」という「モノ」ではなく、ドリルがあけてくれる「穴」という「価値」なんです。
ドリルという「商品・サービス」ではなく、「穴をあける」という「価値」が大事だ、ということです。
この「買いたい」と感じる「価値」のことを「ベネフィット」と呼びます。
どんなドリルを作るか、売るか、を考える前に、お客様がどんな材質のものに、どんな直径の、どんな深さの「穴」をあけたいか、という「価値」を考え、それにあったものを作る・売ることでお客様がドリルを「買いたい」と思うわけです。
B to C(個人顧客対象のビジネス)の場合、例えば「洗剤」で考えてみますと、お客様は「洗剤」という粉や液体が欲しいのではなく、「服の汚れを落としたい」わけです。「服の汚れを落とす」というのが、洗剤がもたらすベネフィットですね。
B to B(法人顧客対象のビジネス)でも同様です。B to B のベネフィットには、以下のようなものがあります。
- 稼ぎたい(利益を上げたい):売上を上げたい、費用を下げたい、など
- 人関連:人手不足を解消したい、従業員の安全性を高めたい、など
例えば、法人顧客がDX(Digital Transformation:デジタル技術による変革)を導入する理由は、「顧客ニーズをつかんで売上を上げたい」「ムダな作業を減らして省力化したい」というような、価値(ベネフィット)を求めてのことです。
まとめますと、「買いたい作りは価値作り」となります。