気候変動、格差などの問題への懸念が増す中で、サステナビリティの取り組みは企業にとって、極めて重要な生存戦略となっている。そうした中、サステナビリティ経営とCSV(Creating Shared Value、共通価値の創造)をどのように行っていけばよいのか。ブリヂストンの稲継明宏氏、ネスレ日本の嘉納未來氏、Gaia Visionの出本哲氏、世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の東梅貞義氏がパネルディスカッションに登壇し、それぞれの立場から語った。
※本コンテンツは、2023年10月20日に開催されたCSV開発機構主催「『サステナビリティ-SDGs以後の最重要生存戦略』出版記念シンポジウム~サステナビリティを儲かるようにする~」のパネルディスカッション「コラボレーションでCSVをどう実現するか」の内容を採録したものです。
サステナビリティ経営には3つの原則がある
今、世界では地球規模で人類の存続を問う「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」という言葉が注目を集めている。本パネルディスカッションのファシリテーターを務めるCSV開発機構 副理事長の水上武彦氏は、次のように指摘する。
「環境の限界を超えることなく世界の真の豊かさを目指すために、サステナビリティ経営には取り組むべき3つの原則があります。1つ目はバリューチェーン全体で自社が及ぼす影響に責任を持つこと。2つ目は世界の重要課題に自社の強みを生かして貢献すること。3つ目は自社に影響を及ぼす課題に戦略的に対応することです」(水上氏)
水上氏はこうしたサステナビリティの原則を企業自らのマテリアリティ(重要課題)に組み込むことが必要だというが、それは具体的にどのようなことか。最初に、先駆的にサステナビリティ経営を推進する2つの企業が、その活動について話した。
ブリヂストン グローバルサステナビリティ統括部門 統括部門長の稲継明宏氏は「当社は『2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ』というビジョンを掲げることで、経営ビジョンにサステナビリティの概念を含めています」と語る。
同社が打ち出すサステナビリティビジネスモデルは、商品を「つくって売る」「使う」、原材料に「戻す」という、バリューチェーン全体で「カーボンニュートラル化+サーキュラーエコノミーの実現」を目指したもの。CO2排出量の削減や、再生可能資源比率の向上を進めるとともに、タイヤを安全に、長く、うまく、効率的に使用してもらうことに貢献するソリューション事業を拡大している。
その1つの例がトラック・バスや航空機用のタイヤの「リトレッド」、タイヤの接地面であるトレッドゴムを貼り替えて再利用する商品・サービスの拡充だ。「メンテナンスとの組み合わせ、RFIDタグを用いた個体管理、さらにデジタルの活用、そして強みである製品力を統合して、循環ビジネスモデルを構築していきます」(稲継氏)