国内最大手の生命保険会社である日本生命。そのサステナビリティ活動は、保険商品の開発、地域の営業職員の活動支援から、機関投資家としてのESG投資まで多岐にわたる。そうして粒度の異なる活動全体を統括するサステナビリティ企画室長を務める鹿島紳一郎氏に、日本生命が生命保険会社として目指すサステナビリティ経営の姿を聞いた。
シリーズ「サステナビリティ経営の最前線」ラインアップ
■経営戦略のど真ん中にある「日立グループのサステナビリティ戦略」に学べ
■企業のサステナビリティ活動、生活者はどう見ている?
■キーパーソンを直撃、「サステナビリティ経営のトップ」を目指すKDDIの現在地
■川崎重工執行役員が語る、目指すサステナビリティ貢献の切り札は“水素”だ
■4チームが切磋琢磨、セブン&アイがサステナビリティ経営で目指す2050年の姿
■サステナビリティ活動の全てを公表するセブン&アイの本気
■生保会社だからこそ「本業と不可分」、ニッセイ流サステナビリティ経営の全貌(本稿)
■「ESGは陰謀」なのか?日本企業が直視すべき環境対策が経営を左右する事実
■企業理念が価値創造の原動力に、オムロン独自のサステナビリティ経営とは
■サステナビリティのリーダーたちが語る、CSVを実現させる協働のあり方
■アサヒグループのSDGs推進会社アサヒユウアスが掲げる「共創ビジネス」の極意
■MS&AD原口氏が語る、生物多様性の保全と金融が密接な関係にある理由
■循環経済への対応は一丁目一番地、三井化学・芳野専務が語る事業変革の決意
■キリンが先駆的に注力する環境経営の取り組み「ネイチャーポジティブ」の真価
■ラッシュジャパンの実例に見る、ビジネスとネイチャーポジティブの両立法
■環境負荷削減とコーヒーのおいしさ向上を追求、UCCの発明「水素焙煎」の真価
■マツダ社長が語る電動化、「めんどくさいクルマ好き会社」の一味違う現実解
■ボルボ・カー・ジャパン不動社長が追求するESG時代の「プレミアム感」とは
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創業の精神を社内に再度浸透させる
――日本生命では、サステナビリティをどう位置付けているのでしょうか。
鹿島紳一郎氏(以下敬称略) 当社は1889年の創業以来、共存共栄・相互扶助の精神のもと、保険商品の提供を通じ、お客さまの安心・安全を第一にした事業を継続してきました。そのため、安心・安全で持続可能な社会の実現を目指すサステナビリティの考え方は、創業時から一貫して取り組んできたテーマだと認識しています。
加えて、創業当初から当社は、お客さまからお預かりした保険料を原資に、鉄道事業や自動車産業等に投融資し、日本の社会インフラ産業を資金面で支える活動をしてきました。これは今でいうESG投資にあたります。さらに、地域の営業部、営業職員による教育、スポーツ、健康増進の活動なども積極的に行ってきました。
そうした取り組み実績を持つ半面、会社全体のサステナビリティ経営について、何を目指していくかという統一的なメッセージ性が薄いという課題がありました。また、営業職員が地域のために行ってきた活動も、サステナビリティとひも付けて語られることはなく、結果として、各支社・営業部で独自に活動をしてきた経緯があります。
そこで、2023年4月、全社一丸となって、さらに積極的な取り組みを展開すべく、企画・推進体制を強化する観点から、「サステナビリティ企画室」を新設し、私が室長に就任しました。各部門に散らばっているさまざまなサステナビリティの取り組みを、全社共通の方向性に取りまとめ、推進することを目指しています。
「サステナビリティ」という言葉は欧米から入ってきた概念であり、長期的な視点が求められるため、日々の活動に取り組んでいる職員からは、自分からは遠いものと捉えられがちです。しかし、自分たちが身近に行ってきた活動が実はサステナビリティだったと、再認識してもらえるように働きかけています。
ただし、同じ仕事を焼き直して「今日からサステナビリティです」と呼んでも意味はなく、また、従業員の意識も高まりません。
そこで、当社グループで働く一人ひとりの仕事とサステナビリティを結びつけるべく、社会への影響をもたらす領域として、「人」「地域社会」「地球環境」に絞り込み、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しました。3つの領域において、これまで取り組んできた保障領域を大事にしながら、地域社会や地球環境に視野を広げてメッセージを展開する活動を開始しています。