セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 ESG推進本部 サステナビリティ推進部 シニアオフィサーの釣流まゆみ氏(撮影:今祥雄)

 セブン&アイがグループを挙げて取り組むサステナビリティ(持続可能性)経営の「すごさ」を2回にわたり伝えている。前編では、釣流まゆみ執行役員サステナビリティ推進部シニアオフィサーに、2050年までの目標と、目標達成のための組織づくりについて聞いた。後編では引き続き活動の具体的な内容と、同グループの取り組みが他社と一線を画している点を語ってもらった。

特集・シリーズ
サステナビリティ経営の最前線

地球環境や社会課題の解決に貢献し、中長期的な視点で企業価値を高めるため、積極的にサステナビリティ経営に取り組む企業が増えています。その一方、さまざまな問題から思うように進まない企業も多いようです。本特集では、サステナビリティ経営に取り組むキーパーソンへのインタビューにより、その成功要件を探ります。

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「プラスチック対策」はペットボトルのリサイクルから

――セブン&アイ・HDは環境宣言「グリーンチャレンジ2050」で4つのテーマを掲げています。前編ではその中の「CO2排出量削減」のための取り組みについて伺いました。他の3つの取り組みについても、具体的な内容を教えてください。

釣流まゆみ氏(以下敬称略) 「プラスチック対策」として、2019年6月に日本コカ・コーラと共同で完全循環型ペットボトルリサイクルを始めました。このときに発売した「一(はじめ)緑茶 一日一本」のペットボトルには、セブン&アイグループの店頭で回収したペットボトルをリサイクルした原料が使われています。循環型社会であるサーキュラーエコノミーをどうやってつくるのかを考えるのも小売企業の役割だと考えています。

――プラスチック容器の見直しではどのようなことを行っているのでしょうか。

釣流 今、セブン-イレブンで使っている弁当、そば、惣菜の容器を、石油由来のインクや着色剤を使用しない白色か半透明のものに変更しています。昨年(2022年)12月から北海道の約1000店で実証実験をしていましたが、今後は全国に広げます。容器にいろいろな原料が含まれているとリサイクルしづらくなるのです。それを防ぐために、この取り組みを進めています。将来的にはできるだけ単一素材でできているプラスチックを使おうと考えています。

 この取り組みはCO2排出量削減にもなっており、全国のセブン-イレブンで取り組むと、容器本体と容器の製造工程などで排出されるCO2を年間800t削減できます。

1社だけでは成果が出ない「2分の1ルール」

――3つ目の取り組み「食品ロス・食品リサイクル対策」では、業界の慣習となっている「3分の1ルール」(小売店へ納品できるのは製造から賞味期限までの最初の1/3の期間の商品)を、「2分の1ルール」(小売店へ納品できるのは製造から賞味期限までの半分までの期間の商品)に変更しています。

釣流 この取り組みは2013年から始め、2020年2月からは食品を扱うセブン&アイグループ4社で常温の加工食品全品を対象に変更しています。

 実は、この運用には難しい問題があります。関係者が集まる会合で物流会社の方が話をしていたのですが、「3分の1ルールを採用しているスーパーがあると、同じ物流倉庫に2分の1ルールの商品と3分の1ルールの商品が並ぶことになる。物流会社としては間違えると大変なことになるので、全部3分の1ルールに統一せざるを得ない」とのことでした。つまり、1社だけ2分の1ルールにしても効果がないのです。

 メーカーや卸売業、物流会社、小売業の全ての人たちがリスクを負って取り組む必要があるのが、この納品期限の変更なのです。