世界31カ国371のストアを運営する Ingkaグループの一員であるイケア・ジャパンは、脱プラスチックや循環型ビジネスへの転換、プラントフードの開発などサステナビリティの取り組みとともに、都心型店舗の出店、アプリを活用したECの拡充と店舗連携などオムニチャネル戦略を積極的に進めてきた。代表取締役社長 兼 CSO(Chief Sustainability Officer)のペトラ・ファーレ氏が、従来のビジネスモデルを超えた、同社の新たな施策について語る。

※本コンテンツは、2022年11月28日に開催されたJBpress主催「第10回リテールDXフォーラム 世界と日本の先進事例に学ぶ!小売業におけるデジタル戦略とサステナビリティ経営の最前線」の特別講演3「イケアのオムニチャネル戦略とサステナビリティの取り組み」の内容を採録したものです。

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「より快適な毎日を、より多くの方々に」変わらないイケアのビジョンと価値観

 イケアの創業者イングヴァル・カンプラード氏は、1943年、スウェーデンのエルムフルトで家具の通信販売会社を始めた。「より快適な毎日を、より多くの方々に」という彼のビジョンは、イケアが世界的な家具ブランドとなった現在も変わらず引き継がれている。ペトラ・ファーレ氏はこれを「私たちの行動全てに影響を与え、全員を同じ方向に導く羅針盤です」と語る。

 ファーレ氏はイケアの理念を体現するもう1つのシンボルとして「デモクラティックデザイン(民主的デザイン)」を挙げる。優れたデザイン、機能性、品質、サステナビリティ、そして低価格という5つの要素を含み、全ての製品はこれにもとづいてデザインされている。「この実現のためには、常に好奇心を持ち、慣習にとらわれず、人々の暮らしや生産活動からインサイトを得る必要があります」

 こうしたビジョン・理念に沿って、「人々の家での暮らしを豊かにしたい」という情熱を燃やし、持続可能な方法で、人々と社会にプラスの影響を与えようと努力する。そうしたイケアのあり方は、上図のような8つの価値観に整理され「イケアバリュー」として世界中のコワーカー(従業員)に共有されている。

 ファーレ氏は「イケアバリューは、ビジネスと地球の両方を大切にするものです」と語り、イケアが、地球上で安全に活動できる範囲を科学的に定義した概念「プラネタリー・バウンダリー」の中でのビジネスを信条としていることを説明した。「地球は全員で共有する家です。私たちは、よりよい地球づくりに貢献できると信じています」

 そんなイケアのフランチャイズグループで最大の小売業者であるIngkaグループに属するイケア・ジャパンは、2006年に日本国内に最初の店舗をオープンし、現在は全国で12の店舗、1カ所の大型物流倉庫、1カ所のカスタマーサポートセンターを運用している。eコマース(EC)も積極的に展開し、より多くの人々にサービスを提供するために、オムニチャネル戦略の強化を進めている。